ロシアは1兆ルーブル(約二兆円)のガス輸出による利益を戦争につぎ込む可能性があります

 

 

ドイツeXXpress「13,7 Milliarden Euro: Russland steckt Gas-Gewinne in den Krieg!」より

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ロシアは石油やガスの輸出による追加収入を、そのままウクライナ戦争に投入する可能性があると言われています。

エネルギー輸出によりウクライナでの「特別作戦」の為に生み出された「追加予算」は、なんと137億ユーロ(2兆円弱)にも及ぶという。

実際ロシアのアントン・シルアノフロシア財務相はロシア国営テレビで、「石油とガスの収入が最大で1兆ルーブル増えると予想している」と述べています。

そしてこの余分な収入は、ウクライナでの戦争にも使われる可能性が高く、ロシア政府は今年、追加収入を「積み立てるよりも使いたい」とシウアノフ財務相は発言。

ロシアは現在、ガス価格が非常に高いため過去最高の収益を上げていおり、プーチン大統領は最近、西側の対ロ制裁を揶揄し「無秩序に行動する」欧州勢は結局のところ自らを傷つけるだけだと述べた。

こうした状況に対応する為に欧州連合(EU)は、海路で入ってくるロシアの石油の輸入をすべて禁止する事で合意し、新たな制裁により、ロシアから購入する石油の量を90%削減できるとしています。

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ロシアは、EU諸国が輸入する石油の約4分の1を供給してきました。これは日量約220万バレルの原油と約120万バレルの石油製品によって構成されています。

米シンクタンク、カーネギー財団によると、これによりロシアは1日10億ドル(約8000万円)以上の利益を得ているとの事です。EUは、今年末までに海路で到着するロシアの石油輸入を禁止する計画で、実行されればEU諸国のロシアからの石油輸入は3分の2に減少。

しかしながら、当面EUはパイプラインで流入する一日あたり80万バレルの石油輸入を「一時的な措置」として引き続き許可します。ハンガリーやスロバキアなどの国々がそれに依存しているからやむを得ない様です。

しかし、同じくロシアの石油をパイプラインで輸入しているドイツとポーランドは、今年末までにこれを停止するとしている。

欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、これ以後、ロシアはこれまでEU諸国に販売していた石油の「10%か11%」しか輸出しなくなるだろうと予測しており、EUの措置に加え、米国はロシアの石油、ガス、石炭の輸入を全面的に禁止することを宣言した。英国は、年内にロシアの石油輸入を段階的に停止する事になっています。

石油制裁はロシアにどんな影響を与えうるか?

エネルギー価格の高騰に助けられ、ロシアは昨年、ヨーロッパへの石油とガスの輸出により推定4000億ユーロ(56兆円程度)を得た。

EUはこの収入の大部分を失う事を望んでいる。しかし、その制裁が完全に効力を発揮するのは数カ月後であり、それ以降もロシアは世界のどこかで石油を売る事ができるだろう。

エネルギーデータ会社Argus Mediaのチーフエコノミスト、David Fyfe氏は、「アジアの国々は、ロシアから今よりも最大で日量100万バレル多く原油を購入するかもしれません。これまでに発表されたすべての制裁の結果、ロシアは石油収入の3分の1から半分を失うかもしれませんが、すべてではありません」と指摘しています。

ヨーロッパは石油不足になるのか?

ロシアの輸入禁止によって、多くのヨーロッパ諸国が石油の供給を圧迫される可能性があり、リトアニアとフィンランドは昨年11月、石油の約8割をロシアから調達していました。

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ロシアはEUが輸入する天然ガスの4割を供給している。

この為、ロシア政府は欧州諸国を支配している事を利用している。

プーチン大統領は、ヨーロッパの「友好的」な国々に対して、通貨の価値を支える為に、ガスの代金をルーブルで支払うよう要求した。

ポーランド、ブルガリア、フィンランドはこれを拒否し、ロシアは供給を停止した。EUは、ロシアの行為を恐喝の一種とみなしているという。

ヨーロッパ最大の経済国であるドイツは、ガス供給のほぼ半分をロシアに依存。

この為、EU諸国がロシア以外のガス供給先を見つけられるかどうかは疑問が残り、「米国やカタールなど、液化天然ガス(LNG)をタンカーで輸送する生産国に頼るしかない」と指摘がなされています。

しかし、ヨーロッパには十分なLNG基地がなく、LNGを陸揚げする設備がない為に特にドイツではその事が問題になっている様です。

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暖房や燃料代はどうなるのか?

ロシアのエネルギーに対する制裁が始まると、消費者はエネルギーや燃料の料金の上昇に直面する。

すでに高い暖房費も、ロシアからヨーロッパへのガス輸出が制限されれば、更に上昇する可能性があります。

英国では、家庭のエネルギー料金は、エネルギー料金の上限によって抑えられてきました。

しかし、上限が引き上げられた4月には700ポンドも上昇して約2,000ポンドになった。今秋の再増税時には約3,000ポンドに達すると予想されている。

英国のガソリンとディーゼルの価格も高騰しており、政府は燃料税の引き下げを発表しているが、ドライバーは記録的な価格に苦しんでいます。

また、EUは石油禁輸をハンガリーに阻止されており、本格的な制裁に至っていません。

EU加盟国はロシアのエネルギーから独立する事を計画しているが、計画されていた石油の禁輸措置については合意する事ができなかった。主に、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が拒否権でそのような禁輸を阻止しているからです。

ハンガリーのペーテル・シヤルト外相も、欧州連合(EU)の次期制裁措置にロシア産ガスの輸入禁止が盛り込まれる可能性を否定した。

「ロシアからガスを輸入できなければ、国も経済も止まってしまうし、家も暖められないし、経済も回らない。問題は、誰が解決策を提示できるかという事だ」と述べています。

こうした状況を踏まえて欧米はロシアの石油収入を抑制する為の新しい計画を始めている様です。

米国はロシアの原油に価格上限を設ける事について欧州の同盟国と協議を進めており、短期的にはモスクワのエネルギー収入を制限しつつ、ロシアの原油の世界への流れを維持することを目的として原油価格上限設定について考えている様子。

ロシアの原油を国際市場に流し続ける一方で、そこからの予算収入を抑制し、ロシアがウクライナで戦争を続ける事を思いとどまらせる作戦で、イエレン米財務長官は6月上旬「私達がしたい事は、ロシアの石油を市場に流し続けて世界価格を抑え、世界的な不況を引き起こし、石油価格を上昇させるような急騰を避けようとする事だと思います。しかし目的は、ロシアに入る収入を制限する事です。」

EU総裁フォン・デア・ライエンは7月初旬に「3月以降、欧州への世界のLNG輸出は2021年比で75%増加し、米国から欧州へのLNG輸出はほぼ3倍になっています。一方、ロシアのパイプラインガスの月間平均輸入量は昨年と比較して33%減少している」と発表しています。