明るい北朝鮮ことシンガポールは、世界で最も上手く管理された経済を持つ国の 1 つですが、その判断は実に冷静で合理的です。
ゼロコロナ政策を中国は止めた事により、ダボス会議参加者や一部の西側の金融機関などは喜んでいましたが、シンガポール政府系ファンドは習近平の「共同富裕」政策や、指導部が信用出来ない為に中国への投資を減らすと決断。
どうしてシンガポールは対中投資を減らすの?
シンガポールのリー・シェンロン首相が会長を務める政府系ファンドGICが対中投資を削減した理由としては、習近平の「共同繁栄」キャンペーンや、中国指導部の予期せぬ動きへの懸念が挙げられています。
GICは中国でのプライベート・エクイティ(これから中国で成長する見込みのある未公開企業や不動産に対して投資を行う投資家や投資ファンドに投資をする事)とベンチャー・キャピタル(中国のベンチャー企業に出資して株式を取得し、将来的にその企業が上場した際に株式を売却し、大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのこと)への投資を削減した一方で、昨年は全世界での投資を17%増やしました。
GICの幹部は第2位の経済大国である中国からのシンガポールの離反について、米中の政治的緊張の高まり、習近平国家主席の「共同富裕」キャンペーン、中国ハイテク部門に対する取り締まりなど北京の予想外の動きへの懸念によるものだとメディアに説明しています。
実際、GICは中国の成長戦略を早くから支持していたにも関わらず、最近は中国での投資に対して慎重なアプローチをとっており、2022年は中国企業への直接投資を2件しか行っておらず、2021年の16件を大幅に下回っています。
中国当局が停止したAnt Groupの 370 億ドルの IPOでもGICは損失を出していますし、中国の不動産業界の危機的な状況も不安視している様子。
※現在、中国不動産米ドル建て債のデフォルト率は50%超に上昇しており、未曾有の事態の下で、殆どの中国不動産債券の投資家は心配しています。
不動産部門からの利益に税収を頼っていた中国地方政府も財政が火の車。
GICは中国経済の屋台骨である不動産業界の崩壊が中国経済全体にも波及する可能性があると見越しているのかもしれません。
ここでは触れられていませんが、当然台湾有事も考慮されていると思われます。
シンガポール政府系ファンドGIC以外にも最近対中投資を停止した機関があります。
運用資産1810億ドル(24兆円程度)のカナダのファンド、オンタリオ教員年金基金は中国企業への投資を停止しました。
地政学的リスクがオンタリオ教員年金基金の中国投資を停止した理由の様子。
一方、日本の対中投資はどの様な動きを見せているのか?
JETOROによると、中国側統計では2021年の日本の対中投資実行額は前年比16.0%増となっており、2019年、2020年と2年連続で減少していたが、3年ぶりに増加に転じているとの事。これがゼロコロナ終了により加速する可能性があります。
例えば、今月2月13日に三菱UFJ銀行の全額出資子会社であるMUFGバンク(中国)は、中国の国家級経済技術開発区グリーン発展連盟(グリーン発展連盟)と、中国の脱炭素促進に関する業務協力協定を締結したと発表しています。
今回の協定でMUFGバンクは、低炭素化や温室効果ガス排出量削減といったグリーン分野での日中企業連携の促進などが可能となったと説明しており、今後は中国グリーン発展連盟と商談会やセミナーを共催し、日本企業の投資動向研究、中央政府や地方政府への政策提言など顧客の脱炭素へ向けた取り組みを支援すると発表しています。
この様に脱炭素を名目に世界最大の温室効果ガス排出国とタッグを組んで日中企業のESG投資を推進するとんでもない話ですが、2023年度はESG関連の対中投資が増加する可能性がありますね。
これは日本政府が後援しており、2023年2月11日に開催された第16回日中省エネルギー・環境総合フォーラムにて西村経済産業大臣から、グリーントランスフォーメーション(GX)に向けた日本の取組について紹介し、脱炭素やESG分野での日中が連携を深めていく方針が発表されています。
「省エネ」、「自動車の電動化・スマート化」、「水素」、「日中長期貿易(水環境対応と汚泥処理)」の4つで日中双方の政府部門・主要企業等が協力を深めていくとの事。
☝西村大臣には先日私も直接コメントしましたが、本当にセンスなさ過ぎですね。。。。
⇧先ほどお見せしたMUFGバンクと中国国家旧経済技術開発区グリーン発展連盟の脱炭素業務協力協定締結も日本政府と中国政府が開いたこのフォーラムで締結されています。
公的年金の積立金を運用しているGPIFも米国制裁中国企業に投資している事が注目を集めていますが、シンガポール政府系ファンドの動きなどを見ていると、どう考えても今後は中国への投資は減らしていった方が良いと思われます。