3月以降、米国の3つの地方銀行が破綻し、現在、別の地方銀行PacWest Bancorpが瀬戸際に立たされている為に、米国では近い内に銀行破綻の連鎖が起こるのではないかと心配されています。(まだ油断なりませんが、PAWCは現在何とか株価が持ち直しています)
PacWest が標的にされたのは、シリコンバレーバンクやファーストリパブリック銀行で取り付け騒ぎ(銀行への信用不安などで、預金者が預金・貯金・掛け金等を取り戻そうとして、急激に金融機関の店頭に殺到する事)を引き起こしたのと同じタイプで、ベンチャー キャピタルやテック企業の顧客から大規模で無保険の預金が集中していた為だと指摘されています。UBS のアナリストは、PacWest の預金の約 23% がベンチャー キャピタルとテクノロジー分野からのものであると推定。
3月にシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が破綻した後に行われた米国の銀行システムの脆弱性に関する調査によると、無保険預金者(銀行が破綻した場合、無保険預金者は預金の一部を失うことになり、逃げる動機になりうる)の半分が資金を引き出すと決めただけでも、さらに186の銀行が破綻する危険性があると指摘されていました。
(無保険預金とは、FDIC( 米連邦預金保険公社)の預金保険限度額25万ドル以上の顧客預金のこと。)
なぜ米国の地方銀行は破綻しているの?
地方銀行が破綻しているのは、インフレ抑制の為に連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な利上げを行う事によって、国債や住宅ローン担保証券といった銀行の資産価値が低下している為と言われています。
ほとんどの債券は固定金利で、金利が下がると魅力的になり、需要が高まり債券の価格が上昇する。一方、金利が上昇すると、投資家は債券の固定金利の低さを好まなくなり、債券の価格が下がる。
FRBは10回連続の利上げを実施。16年ぶりの高水準に迄引き上げました。
金利の上昇により、預金者はより高利回りの譲渡性預金やマネーマーケット・ファンドに資金を移動させるようになりました。
FRBのパウエル議長は、FRBは金利に関する次の動きを決めるにあたり、銀行セクターの混乱を含むいくつかの要因を監視すると述べた。
パウエルは、過去6週間で3つの大手銀行が破綻したことで、他の銀行が融資を引き締める可能性が高く、それがFRBのインフレ対策につながると強調した様です。FRBが過去1年間に行った急激な利上げは、景気を減速させ始めており、多くのエコノミストが2023年後半から2024年前半に景気後退を予想しています。
FRB(連邦準備制度理事会)の最新の利上げは、地方銀行の破綻に「ドミノ効果」を引き起こす可能性
パウエルFRB議長は記者会見で、今後利上げが必要かどうかを見守ると述べ、First Republic Bankの破綻(史上2番目の規模の銀行破綻)に伴う融資の引き下げ幅によっては、今回の利上げが当面の最後の利上げとなる可能性を示唆しました。
また、米国の銀行システムは「健全で弾力的」であり、銀行セクターの状況は3月上旬以降「広範に改善」しているとも述べました。(そうは見えない)
アナリストによると、FRBが再び利上げを決定した事で、預金の大量引き出しに見舞われた一部の中堅銀行や地方銀行が崖っぷちに立たされるのではないかという懸念が広がっているようです。
金融エコノミストでボストンカレッジの経済学教授であるブライアン・ベスーン氏は、「予想以上に利上げが進むたびに、銀行の問題は大きく悪化していくだろう」と語る。「いったん信頼が損なわれ始めると、ドミノ倒しのような現象が起こります。そして今、地方銀行のドミノ倒しが起こるかどうかの瀬戸際にいる」と指摘。
First Republic Bankの破綻をきっかけに、他の中堅金融機関の財務状況に対する投資家の懸念が高まり、米国の地方銀行PacWest BancorpとWestern Alliance Bankの株価は急落しました。
「現在、殆どの中堅・中小銀行でストレスが高まっており、ウォール街の大手銀行と同じようにリスクをヘッジする手段がない為、大半が耐えられない状態です」とベスーンは言います。
下院と上院の民主党の幹部グループは、経済への影響が懸念される為、パウエルに利上げを一時停止するよう要請しています。
「FRBの政策の独立性に疑問は持たないが、利上げを続ける事は、最大限の雇用と物価安定の両方を達成するというFRBの2つの使命を放棄する事になり、それに巻き込まれる中小企業や労働者階級について殆ど考慮されていないようだ」と、議員達はパウエルへの書簡に書いています。
しかし、FRBの政策担当者は、直ぐ金利を引き下げようとは考えておらず、さらなる利上げが正当化される可能性があると強硬に主張。
いずれにしても、これ以上地方銀行が破綻すると米国経済が大変な事になります。