
ゴールドマンサックスのアナリストは、トランプ大統領が猛烈な勢いで進めている移民制限政策は米国経済と労働力成長に多少のマイナスの影響を与えると分析。
GSが今週月曜日に発表した調査ノートのベースラインシナリオによると、米国への純移民数は年間75万人に急減し、今年のGDP潜在成長率を0.3~0.4パーセントポイント押し下げられると予測しています。国勢調査局によると、昨年は280万人が米国に移住していました。
現在米国にいる不法移民は全労働力の約5%を占め、造園業や建築サービス業などの特定の業界では5分の1にまで拡大しているそう。
「これらの労働者を突然失う事は、多くの業界にとって大きな混乱を招き、インフレにも大きな影響を与える可能性がある」とアナリストらは記しています。
ゴールドマン・サックスのアナリストらは「移民急増の終焉」と題する報告書を発表し、トランプ大統領の国境政策が、バイデン・ハリス政権により制御不能に陥った移民の国境侵攻をいかに終わらせつつあるかを概説しました。
報告書は移民政策が大きな転換を見せていると強調し、この終焉を示す重要なグラフを掲載しています。

純移民は2022年から2024年にかけて、パンデミック前の水準を上回る急増を見せ、2023年後半には年率350万~400万人のピークを迎えたが、2024年12月には約170万人にまで落ち込んだとGSアナリストは指摘。
この急増は開放的な国境政策と、税金を投入したNGOの複雑なネットワークが、移民を米国に送り込むベルトコンベアーとして機能した事が主な原因であり、国内では人材派遣会社が移民を国内でバスに乗せたり、飛行機に乗せたりする物流を担っていたそうです。
アナリスト達はトランプ政権当局者が3つの方法で移民の傾向を逆転させようとしていると指摘。
- 第一に、国境警備を強化し、不法移民が「メキシコ国内に留まる」措置を復活させ、いくつかの人道的仮釈放プログラムを終了させる事で、新たな移民の流入を減らす事を目指す。
- 第二に、既に米国にいる移民の一部に対する法的保護を撤廃しようとしており、その結果、一部の移民が労働許可を失う可能性がある。
- 第三に、強制送還を増やそうとしている。
これは先日のカナダとメキシコへの関税での脅迫で明らかですね。
GSはトランプの不法移民強制送還によるマクロ経済への影響は限定されると予想しており、移民主導の労働力増加は2026年前半に正常化され、GDP成長とインフレへの影響は僅かとなるとしています。

不法移民国外追放のマクロ経済的影響についてアナリストは更に次のように述べています。
- 我々のベースラインでは、移民数の減速によるマクロ経済への影響は限定的である筈だ。移民による労働力増加の押し上げはピーク時に通常より10万人多かったが、現在は通常より約4万人多い程度で、2026年初頭までに通常に戻る筈だ。移民増加のペースが年間75万人増加へと鈍化すると、2023~2024年のペースよりは潜在GDP成長率が30~40ベーシスポイント少なくなるが、パンデミック前のペースより僅か5ベーシスポイント少ない程度だ。そして、米国の労働市場が均衡を取り戻した今、賃金上昇とインフレへの影響は控えめになる筈だ。
- 不法移民取り締まりによって不法移民が仕事に行くのを恐れたり、雇用主が彼らを雇用する事を恐れたりするような環境が生まれるとする極端なリスクシナリオでは、既に米国にいる不法移民は全労働力の 4 ~ 5%、一部の業界では 15 ~ 20% を占めている為、経済的影響は更に深刻になるとしています。これらの労働者が突然失われると、多くの業界にとって大きな混乱を招き、インフレへの影響も大きくなる可能性がある。
- ベースライン シナリオまたはリスク シナリオが実現しているかどうかは、どうすれば分かるのでしょうか。最新の動向を監視する為に、移民データと労働市場データの両方を使用できます。移民裁判、政府機関のデータ、および毎日の逮捕データを使用して、許可された移民と不法移民の総流入および流出のリアルタイム トラッカーを構築します。これらのデータには約 1.5 か月の遅れがありますが、選挙以来、劇的な変化はまだ見られません。
- 労働者が家に留まり職場を避けるリスクや、大規模な自主退職のリスクをリアルタイムで監視するには、労働市場データの方が移民データよりも有用である可能性がある。具体的には、世帯調査のミクロデータを使用して、最近の移民の参加、失業、求職、調査回答率を追跡し、事業所調査を使用して、不法移民を多く雇用している業界の雇用と平均賃金を追跡する。求職率は最近低下しているが、他の指標はこれまでのところかなり安定している。
不法移民と労働力として使っている主な産業⇩

造園サービス・家事補助サービス・建物および住居へのサービス(クリーニングやメンテ等ですかね)・農作物生産・家畜屠殺および加工・特定外食品産業・ベーカリー、トルティーヤ製造・ドライクリーニング、ランドリーサービス・建設業
移民による労働力の増加は今年末までに終了する予定とGSは言います。

移民受け入れが経済成長に繋がるから移民推進をしなければならないと経団連や日本のメディアは力説しているのを見かけますが、アメリカではそうとも限らないと言われています。
日本の移民政策に関する去年の政党別アンケート⇩
