「中国の自動車輸出、214万台 日本を抜いて1~6月期も世界首位」のカラクリ

 

Photo Li Yang

· China News
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この様に、中国が日本を抜いて世界第一の自動車輸出国になったと中国メディアと日本メディアは大々的に報道しています。

これを見た一般の方は「中国は凄い、とうとう自動車輸出でも日本は負けてしまった」と落胆するかもしれません。

これには理由があります。現在、EV が中国の自動車輸出全体の半分を占めていますが、このシェアで日本が押されているというのは事実です。

しかしながら、中国の自動車輸出メーカー2022トップ10を見てみるとテスラが第三位に入っていたり、海外メーカーが中国で生産し、輸出している分が含まれている事が分かります。

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また、ランキングを見ると中国の自動車輸出の半分はEVが占めている事が分かります。

その殆どは外国ブランドによるEV車両で、通常は中国国内パートナーとの合弁事業を通じて製造されています。

2022年上半期には、西ヨーロッパが中国の自動車輸出全体の約34%を占めており、欧州のEV市場における中国のシェアは、2022年の5%から早ければ2025年には15%まで上昇すると予測されています。

 

2022年の中国自動車輸出台数トップ10の内訳

中国国営チャイナデイリーの発表を見てみましょう。

1位 SAIC Motor 2位 Chery Automobile  3位 Tesla 4位 Changan Auto 5位  Dongfeng Motor Corporation 6位  Geely Holding Group と続きました。

 

2022年上半期の中国の自動車輸出総括表⇩

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1位 SAIC Motor(上海汽車)

1位のSAIC Motor(上海汽車)はSAIC-Volkswagen (フォルクスワーゲン、シュコダ、アウディ)および上海汽車ゼネラルモーターズ(ビュイック、シボレー、キャデラック)の車両を製造して販売しており、こちらが輸出車両の約半分を占めています。

上汽集団が自国ブランドとして輸出するEVブランドは主に「MG」ブランドです。

以前は英国ブランドでしたが、SAIC Motor(上海汽車)に買収された後、この会社の主力輸出ブランドになっています。

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 欧州で異常なほどこのEVが売れるのはこうした背景があるようです。

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2位 Chery Automobile(奇瑞)

2012年、奇瑞はジャガー・ランドローバーと折半出資の合弁会社「奇瑞ジャガー・ランドローバー」を設立しました。

TiggoとArrizoモデルで既に国際的な成功を収めており、2022年には45万台を輸出しています。

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初めて作った車は「風雲」。ベースはフォルクスワーゲン グループのスペイン子会社であるセアトによって、 1991 年から 1998 年にかけて製造されたモデルである、初代セアト トレドのバッジを変更したものでした。

比較的独自ブランドである事を誇っている様です。

そんな輸出好調を誇っている奇瑞ですが、中国国内でクレームが出ているようです。

中国ユーザーからの報告、「奇瑞瑞湖3xe、誤魔化しのアップグレードで航続距離が低下」というクレームがありました。

「私の車は奇瑞3xe480ですが、去年4月上旬にディーラーからアップグレードする様に連絡がありました。

その後、頻繁に連絡があり、アップデートするとバッテリーの寿命が伸びますが、アップグレードしない場合はその結果の責任は私にあり、安全上の問題が発生すると言われ応じました。

システムをアップグレードした後、初めて充電すると電圧は 401V までしか充電できず、ほぼ12V減少した」との事です。

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中国では日常なのかもですが、海外ユーザーは大丈夫なのでしょうか。

 

中国自動車世界輸出3位のテスラは説明するまでもないので省きます。

 

4位 长安汽车(長安汽車)

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親会社は江鈴汽車と中国兵器装备集团(中国国家武器装備集団)です。

元々は1862 年に李鴻章によって上海の松江に設立された上海海砲局、第 21 工廠(工場)は抗日戦争中に3,000 トン以上の弾薬、 30 万発以上の手榴弾、約 50 万丁の銃器を 製造し、抗日戦争全体を通じて最大の兵器事業を行っていました。

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いや~、歴史を感じますね。我が国と散々戦った相手です。それが今や車屋さん。

1993年4月15日、兵器工業公司と日本のスズキは日本の「長安鈴木汽車有限公司」に関する合弁契約を正式に締結しており、スズキベースに成長した会社でもあります。

そんな長安汽車と日本のマツダは2024年末から中国でEVラインアップを広げる為に、中国で合弁会社を長安汽車と立ち上げ共同開発する予定です。

マツダだけではなく、米国メーカーも取り込まれており、8/1、フォード・モーターの中国における電気自動車部門であるフォード・マスタング・マッハ-Eは、長安汽車との合弁会社である”長安フォード”に吸収されたと発表もありました。

https://youtu.be/7acYzpXZHvQ

長安汽車は7月7日、2023年上半期の販売台数が前年同期比8.0%増の121万5,681台、うち自主ブランド車販売台数は13.4%増の102万506台だったと発表しています。

 

5位 Dongfeng Motor Corporation(东风汽车集团)

完全な国営企業で、中国本土で多数の合弁事業または完全所有企業を運営しています 。

ホームページのトップからして共産党色溢れる企業ですよ。

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日本企業とも関係が深い企業で、以下の様な合弁会社を持っていました。

東風日産乗用車有限公司(広州、広東/襄陽、湖北、東風日産、旧風神汽車)

東風ヴェヌーシア乗用車会社(広州、広東/襄陽、湖北、東風ヴェヌーシア)

神龍汽車有限公司(武漢、湖北、東風プジョー/東風シトロエン)

東風悦達起亜汽車有限公司(江蘇省塩城市)

東風ホンダ汽車有限公司(湖北省武漢市)

東風ルノー汽車有限公司(湖北省武漢市)

東風日産ディーゼル汽車有限公司(浙江省杭州市)

東風ホンダエンジン有限公司(広東省広州市)

東風ホンダ汽車部件有限公司(広東省恵州市)

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海外輸出している主力車両はイマイチ分り辛く、上位の中国メーカーと比較してもぱっとしない感じです。

日産やホンダ、プジョーなどの車も輸出していますが、若干苦戦か?

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6位  Geely Holding Group吉利集団)

吉利集団はボルボやロータスの株を支配し、一部のブランドを海外に積極的に輸出しており、おそらく最も世界的な中国のOEMです。

メルセデスベンツが所有している事で知られるダイムラーの株式9.69%を、親会社の浙江吉利控股集団が取得して筆頭株主となっています。

創業者の李書福は、習近平総書記が「吉利を支援せずしてどの企業を支援するのか」と述べるほどの間柄で、習近平が浙江省党委書記だった時代から親しい間柄にあるとされています。

そんな吉利ですが、誇大広告で去年も寧波市市場監督局から60万元の罰金を科せられた企業です。

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海外で販売する際にもやっている可能性があります。

この様に、外国企業が中国で生産した車両の販売数も中国の自動車輸出に組み込まれている為、中国が「自動車輸出世界一」というのは、世界の自動車会社の工場であるからこその数字で、実力を示しているわけではないという見方もできます。

それ以外にも中国国内からもっと気になる告発があります。

政府の補助金を得るために中国自動車メーカーが販売数を水増ししており、その証拠が動画で紹介されている廃棄されたEVの墓場だというのです。

 

中国のEVメーカーは世界を騙しているのか?

中国のEVメーカーはその販売台数で世界を驚かせており、世界のEV市場を支配し始めているように見えますが本当なのでしょうか?

そこに疑問を投げかける動画が散見されます。

https://youtu.be/wyiRVo_U8iQ

こうした動画を投稿している人物は自動車メーカーが販売台数を水増しして見せる為に、ひそかにEVをダンピングしていると指摘しています。

この欺瞞的な戦術は、中国政府から補助金を得ながら投資家から資金を集める事に有効であると。

撮影されている車には登録されたナンバープレートが付いており、販売された様に偽装されていると指摘されています。

近年、中国はEV市場で圧倒的な強さを見せ、持続可能な未来に向けて大胆に交通革命を起こそうとしているが、統計によると、中国EV企業の90%が財政破綻の危機に瀕しており、その影響は単なる経済的後退をはるかに超えている事が明らかになりつつあるなどと・・・

 

この様に中国EVビジネスは補助金ありきで価格競争で勝ち残ってきたのは有名な話です。

日本メディアが報道する「中国の自動車輸出、214万台 日本を抜いて1~6月期も世界首位」が本物かどうかは、補助金が打ち切られた今年の業績で明らかになります。

もし、補助金欲しさに販売台数の偽装をしていたのなら、今年からはかなり厳しくなるかもしれません。