トランプの関税について店頭販売価格がその関税率のまま上がると思っている人がいますが、50%の関税が50%の価格上昇を意味するわけではありません。
一部の人は関税が小売価格を関税率のまま急騰させると警告しています(呆)。

「関税が小売価格を関税率のまま急騰させる」は簡単に唱える事ができるセリフですが、それは間違いです。。
― 完全に間違っています ―
経済学の基本を理解している人なら誰でも分かる筈ですが。。。
関税は取引価格に適用されるものであり、最終的な小売価格に直接適用されるわけではありません。取引価格とは、輸入業者が輸出業者に支払う金額に、運賃や保険を加えたものです。このコストは長いサプライチェーンの最初のステップに過ぎません。製品が消費者の手に届くころには、国内輸送費、倉庫保管費、人件費、光熱費、消費税、さらに販売に関わるそれぞれの段階の利益率が上乗せされ、価格が跳ね上がっています。関税は、この多くの要素の1つに過ぎません。

簡単な例を挙げてみましょう。
小売業者が取引価格100ドルの製品を輸入したとします。
50%の関税を加えると、輸入業者にとってのコストは150ドルになります。
その輸入業者がその製品を卸売価格200ドルで小売業者に販売し、小売業者が更にそれを300ドルに引き上げて販売するかもしれません。
この50ドルの関税は、小売価格の16.7%に相当します。250%の関税では83.7%に相当します。
関税の全額が価格に転嫁されたとしても、小売価格が50%上昇するわけではなく、約17%程度の増加にとどまるのです。250%の関税では83.7%が関税の全額が価格に転嫁されると、約84%の小売価格の増加です。
しかし、ここで重要なポイントがあります。
関税のコストが常に消費者に完全に転嫁されるわけではないという事です。
輸入業者や小売業者は、市場が受け入れられる価格を超えて値上げできない事を知っています。場合によっては、コストの一部を吸収したり、経費を削減したり、契約を再交渉したり、異なる供給元に切り替えたりすることもあります。
市場は反応するのであり、ただ受け入れるだけではないのです。
実世界のデータも見てみましょう。
全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)は、2018〜2019年に実施された対中関税について分析しました。

その結果、10%の関税が課された場合、小売価格は1~2%上昇した事が分かりました。
したがって、仮に50%の関税が課されたとしても、小売価格の上昇は5~10%程度にとどまる可能性があります。
250%では中国側と米国側企業が工夫をしても小売価格の上昇は25~50%程度ですので成り立ちませんが。
「50%」という数字は、「たったの5~10%かもしれない」という数字よりも遥かに劇的です。
価格の仕組みを説明するよりも、愚民の怒りを引き起こした方が簡単なのですよね。
誘導しか考えていないメディアやテレビは、殆どの人が卸売価格と小売価格の違いを理解していないか、数字を掘り下げるほどの関心を持たないとたかを括っているのです。
なので、トランプの世界一律10%関税は小売価格に1~2%上昇の影響しか与えない、問題となるのは中国への最大250%関税だと理解が出来ます。
https://www.americanthinker.com/blog/2025/04/no_a_50_percent_tariff_doesn_t_mean_a_50_percent_price_hike.html