「台湾には数十年来の地方政治の構造があり、それを打破するのは非常に困難である」
争われた21の県・市長選には昔からの地元の岩盤支持層があり、それを崩せないという意見です。
台湾地方選挙は一般的に新型コロナウイルス対策や治安といった域内問題が争点となるとロイターでも指摘されていますが、この争点で争われる事もあって地域の有力者が強いのだと思われます。
蔡総統は今回の選挙を地方選以上のものと位置付け、中国との軍事的緊張の中で台湾がどのように民主主義を守るか(ここまで強いメッセージを出してでも地方の首長ポストを取ろうとした)と仰ってたのでダメージが大きな部分はあったと思われますが、そこまで失望する必要は無いとアナリスト。
シンクタンク「対話中国」の所長は、今回の選挙について、選挙前から台湾のインターネット上では、与党におしおきをする必要性を訴える世論の流れがあったと指摘しています。
また、与党の敗北後「中国への抵抗と台湾の保護」が失敗したという論調が出ているが、そう考えていないとの事。
台湾中国問題は、本来、地方政治や選挙では反映され辛いものであり、台湾には数十年来の地方政治の構造があり、それを打破するのは非常に困難であると述べています。(日本と同じですね)
しかし、今回の選挙の選挙結果は「中国に抵抗し、台湾を守る」という問題に対する台湾人の政治的志向を表すものではないので、外野や国際メディアまでが誤解しないようにしたいと主張。
他にもこの様な意見があります。
ワシントンのシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)は台湾の地方選挙というものは、中国との関係性だけで測られる事はなく、候補者自身の属性と国内問題が焦点であり、2024年の選挙の絶対的な指標とするのは誤りだと指摘しており、台湾に選挙視察に来ていた中国の海外民主活動家は、与党にもそれなりの問題があるので、選挙結果は意外ではない、台湾世論が中国と戦って台湾を守る事を諦めたわけでもないと言及した。
基本的にはこの様な昔からの構造があり、それを蔡総統が強いメッセージを出して突破しようとしたが上手くいかなかったという事だと見ています。
中国共産党の影響力工作に対しては、先日の金門島の大佐が寝返っていた事例などからして警戒はすべきですが、まだ2024の総統選まで時間はあります。
これから気を付ければよいでしょう。
実際、台湾の方も選挙への中国共産党の影響力工作に警戒をしており、今回の選挙前にもこの様な動きがありました。
台湾のNGOが今回の地方選挙の候補者に「(中国共産党に)降伏しない誓約書」に署名するよう求めたと9月に報道。
誓約書には「中国が台湾を軍事的に侵略した場合、台湾を死守し、侵略に対抗し、決して降伏しない事を誓います。
外国の敵対勢力の侵入を最も警戒し、降伏、無抵抗、敵と和睦すべきとの主張を言動、その他で主張、宣伝、ロビー、支持しない。 当選したかどうかに関わらず、台湾の人々の抵抗の意志を強化し、現地で健全な民間防衛システムの構築に貢献するに努力する事を約束します。」等が書かれていました。
今後二年、台湾への影響力工作は激しくなると思われます。習近平がいかなる手段を使ってでも台湾を統一すると宣言しているからです。
海外への影響力工作組織である統一戦線工作部に、台湾統一に向けての工作に励むように指令も出されています。
台湾はこうした中国からの影響力工作にしっかりと対応し、弾き返す事が求められて来るでしょうね。