
- アメリカでは財政緊縮策(DOGEや関税の事)や景気後退のリスクが高まっている為、資金が投資先としてより魅力的なヨーロッパへ移動しています。そしてヨーロッパではドイツに見られる様な大規模な財政拡張が計画されています。
- ETF(上場投資信託)の資金フローは、株式市場の資金の流れを示す良い指標で、上のチャートは主要なETFの四半期ごとの純資金フローを示しており、その状況を明確に示しています。
- 黒がヨーロッパETFへの資金流入出量。茶色がアメリカETFへの資金流入出量です。
個人的にはこの流れが今の米国株低迷の原因の1つではないかと見ています。
EU50
※欧州の株式市場全体の動きを表す株価指数です。ユーロ圏の12カ国における上位銘柄から構成され、流動性の高い50の優良銘柄(ブルーチップ)の株価に基づいて算出されます。

今年の一月から資金流入が絶好調だった事が分かります。

4時間足で見てみると、2月中旬から停滞を始め、3月10日位から雲行きが怪しくなりサポートを割ってサポート付近で揉みあっているのが見えますね。
15分足に拡大した様子⇩

しかしながら、シティバンクの米国経済予想では最近上昇傾向になってきましたが、欧州経済予想は若干下落を示唆しています。ヨーロッパの好調ぶりは長くは続かないかもしれません。

黄色が米国、紫がヨーロッパです。
こうした動きの理由は簡単、またしてもヨーロッパは自爆しそうだからです。
例えばこれ⇩
ドイツ、防衛予算とインフラ予算と見られていた5,000億ユーロのインフラ基金のうち1,000億ユーロを今やオワコンの気候変動に充当すると発表。

見ると、ドイツ政府はバイデン政権がやってきたような湯水の様な借金による景気向上・気候変動政策推進を始めようとしています。
先日の総選挙で勝利した保守党党首フリードリヒ・メルツ氏は防衛費増額とインフラ整備の為の巨額の借金による支出パッケージについて、緑の党と暫定合意に達しましたが、その為に緑の党に1000億ユーロを政府の気候変動対策に振り向けられる事を約束しました。
具体的には、
- 目標: キリスト教民主党(メルツ氏の党)と社会民主党が、憲法改正により国防費を債務制限から解放し、インフラ投資の為に5000億ユーロの基金を設立しようとしている。その為には、議会で超多数の議席が必要。
- 合意内容(報道に基づく): インフラ資金は新しいプロジェクトに充てられ、1000億ユーロが気候変動対策に振り向けられる。これは緑の党を合意に引き込む為の取引材料となった模様。
- 背景: メルツ氏は首相の座を狙っており、この合意は政権獲得に向けた動きと見られる。
ただでさえドイツ国債利回りが既に急上昇しているのですが・・・

皆さんご存じのように、国債利回りは株価下落の主な要因となります。
- 国債利回り急騰により、企業の利益が圧迫され、投資家の期待が低下し、株価が下落する可能性があります。
- 割安感の低下:金利が上昇すると株式の収益率の魅力が相対的に低下します。投資家は、リスクの高い株式よりも安全な慎重に資金を移す可能性がある為、株価が下落する可能性があるのです。
- 景気減速への心配: 適切な景気の急上昇は、将来の景気減速の予測と見なされる事があります。
EU50の上昇を支えているのはドイツ企業の銘柄によるものが大きいので、ドイツがコケるとEU50 もコケます。
EU50 構成銘柄割合⇩

冒頭でアメリカの株式市場から資金が流出し、ヨーロッパの株式市場には資金が流入しており、そのペースも加速していると言いましたが、ヨーロッパの株式市場にもこうしたリスクがある事には注意が必要です。
また、トランプの動きによって新たな危機がヨーロッパに迫りつつあります。
それはロシアのウクライナ侵略開始後もずっと続いてきたヨーロッパのロシアからの原油・天然ガス輸入がトランプにより停止させられた事です。

こちらはフィンランドのシンクタンクによる現在のロシアの原油・天然ガスを買っている国についての報告です。

ロシアがウクライナを侵略する為の主な戦費はロシア産石油・天然ガスの販売代金です。
それにも関わらず、侵攻3年目のEUによるロシア産化石燃料の輸入量はウクライナへの資金援助を上回っているのをご存じでしょうか?
様々な制裁措置やロシア産エネルギーへの依存が齎す脅威にも関わらず、ロシアのウクライナ侵攻から3年目となる今年、特にEUのロシア産化石燃料の輸入額はほぼ横ばいの219億ユーロ(3兆4930億円位)となり、金額では前年比6%減となったが、数量では前年比1%減にとどまっています。
注目すべきは、侵攻3年目のEUによるロシア産化石燃料の輸入が、2024年にウクライナに送った187億ユーロの資金援助を上回った事です。
侵攻3年目のロシアの化石燃料世界総収益も2,420億ユーロに達し、2022年2月のウクライナ侵攻開始以来、総額8,470億ユーロとなりました。
新規市場に対するロシアの原油・天然ガス輸出マーケットは、侵攻3年目にも揺るぎないものとなりました。ロシアの化石燃料の3大購入国である中国(780億ユーロ:12兆4410億円)、インド(490億ユーロ:7兆8155円)、トルコ(340億ユーロ:5兆4230億円)は、侵攻3年目のロシアの化石燃料からの総収入の74%を占めています。インドとトルコの輸入額はそれぞれ前年比8%と6%増加。
※2024年ユーロ円平均レート159.5円。

2024もロシアの「影の」艦隊は禁輸された石油を非制裁国に迂回させて原油・天然ガスを販売しています。558隻のロシアの「影の」タンカーが、1億6,700万トン(61%)、830億ユーロ相当の石油海上輸出を行ったことが判明しており、この船隊は、ロシアの海上原油輸送の78%(570億ユーロ相当)、石油精製品の37%(260億ユーロ相当)を売り上げています。

主な調査結果
ウクライナ侵攻3年目となる2024年にロシアは、世界への化石燃料輸出で2,420億ユーロ:38兆6000億円弱(前年比3%減)を稼いでいます(原油で1,040億ユーロ、石油製品で750億ユーロ、ガスで400億ユーロ、石炭で230億ユーロ)。
多くの制裁にも関わらず、3年目のロシアの収入は、ウクライナ侵攻の前年と比較して僅か8%の減少にとどまったままです。ウクライナ侵攻以来、ロシアは化石燃料の輸出で推定8,470億ユーロ(135兆円位)を世界的に稼いでいるのです。
トランプ政権にあれだけウクライナ防衛費を要求しているEUはというと、去年ロシアの化石燃料輸入に支払った金額は219億ユーロで、前年比わずか1%の減少にとどまっている状態です。これは侵去年のロシアからの原油・天然ガス輸入額が2024年にウクライナに送られた187億ユーロの資金援助を上回ったという事です。
ロシアに支援を上回る資金を提供し、戦争を継続をする為の資金を提供しながら、トランプにはウクライナを支援する為の資金を提供しろと言っているようなものです(呆)
様々な制裁にも関わらず、EU加盟国は侵攻3年目にロシアのLNGに70億ユーロを支出し、その量は前年比で9%増加している有様。
G7諸国はインドとトルコの6つの製油所から180億ユーロ相当の石油製品を輸入しましたが、そのうち90億ユーロはロシア産原油から精製されたと推定されています。ロシア産原油を原料とする石油製品の輸入により、ロシアには推定40億ユーロの税収が齎されました
しかし、トランプ大統領が制裁を受けたロシアの銀行がロシアのエネルギーに対するヨーロッパの支払いを処理する事を認めていたバイデンの免除措置を延長しなかったので、この免除措置は2025年3月12日に失効し、ヨーロッパは今後ロシアから原油・天然ガスを輸入できなくなりました。
これにより、ヨーロッパのインフレ率上昇が予想されます。
ーロ圏の年間インフレ率は2024年12月に2.4%となり、11月の2.2%から上昇。1年前のインフレ率は2.9%でしたが再び上昇し始めています。

日本のテレビは、極悪なトランプがウクライナを見捨てロシアに接近し、それを食い止める為にヨーロッパが粉骨砕身しているといったストーリーを視聴者に植え付けていますが、事態はそんな単純ではありません。
トランプの関税による不確実性が落ち着き、ヨーロッパのメッキが剥げてくるについて、ヨーロッパに浮気している資金はアメリカやビットコインに戻ってくる可能性があります。