スナク首相は国民に直接コストを課す気候変動対策などの環境政策を延期、あるいは放棄する可能性を示唆しました。
次期選挙で労働党との対立軸を作るよう保守党右派から圧力を受けている為とも言われていますが、方向性は素晴らしいと思います。
バイデン政権やドイツ政府が行っている様な極端な気候変動政策は経済に破滅的な影響を齎し、太陽光パネルなどのシェアを独占している中国政府を肥えさせるだけです。
スナク首相は政治的な駆け引きもある中で、英国の脱炭素目標達成を行う為に「無駄に国民の生活に手間とコストを増やすべきではない」と述べています。
しかし、英国政府には様々な分野の炭素予算を明確にして、2050年までに脱炭素目標をどのように達成するかを詳細に定める法的義務がある為、環境保護団体はグリーン政策を骨抜きにする決定に法廷で異議を唱える可能性があります。
こうした脱炭素政策を一部撤回する動きは、7月20日に行われたボリス・ジョンソン元首相の選挙区で与党保守党が無闇な脱炭素政策に反対し、僅差で勝利出来たから出てきたようです。
保守党の戦略家らは補選以来、環境政策を巡って対立しているイギリスの最大野党・労働党と明確な境界線を設けることで、全国の僅差の議席を巡り勝利を再現できると考えています。
それはイギリス国民が行き過ぎた脱炭素政策に反対している事を与党が把握しているからともいえます。
スナク首相はメディアのインタビューで脱炭素政策について「私達は今、インフレの時代を生きている。それが家庭や家計に影響を与えている。私はそれを増やしたくない。
そう、私達は脱炭素に向けて前進するつもりですが、国民の生活に無駄な手間やコストを増やさないよう、適切かつ現実的な方法でそれを行うつもりです。」と語っています。
しかし、スナク首相は脱炭素政策推進派の保守党議員からの圧力にも直面しています。
推進派のロジックはこのようなものです。
「脱炭素政策は英国が長期的に高いコストを回避し、過去に取り残されるのではなく、未来の産業を確立することができる唯一の比例的かつ現実的な方法なのです」
「脱炭素はイデオロギーの問題ではなく、雇用と成長を実現し、これから起こるエネルギー移行に投資することだ。英国はこの変化をリードするか、あるいは追随するかの選択を迫られている。」
こうした推進派は、実際には太陽光パネルと風力発電に頼る以外に大したプランは無く、経済的なコストも国民生活の困窮も考えていないようです。
日本政府は「10年間で150兆円を超えるGX投資」を実現し、脱炭素と経済成長を両立する、としています。
日本では岸田首相肝いりのGX実行会議が設置され、去年末GX実現に向けた基本方針(案) ~今後10年を見据えたロードマップ~ が発表されました。
そこで、今後10年間で150兆円を超えるGX投資を官民協調で実現していくと提言がなされています。
国として20兆円規模の大胆な先行投資支援の実行が計画されていて、脱炭素政策導入の結果として得られる将来の財源を裏付けとした20兆円規模の「GX経済移行債」を、来年度以降10年間、毎年度、国会の議決を経た金額の範囲内で発行していくとも。
原発による比率を20%程度まで引き上げる事も含まれるとの事ですが、太陽光パネルの更なる導入も謳われています。
いずれにしても、政府が主導し20兆円規模の税金を投入する案件にしては注目度が低く、日本国民にはほぼ知らされていないように感じる動きです。
防衛費については5年間で43兆円とされ、増税での対応がしきりに報道がされていますが、
今後10年間で150兆円を超える政府主導のGX投資(脱炭素投資)についてはメディアは沈黙。
政府主導のGX投資の20兆円規模の財源はなんなんでしょうか?
日本政府にも、英国の「国民に負担を強いる形での脱炭素政策見直し等」を参考に戦略を練っていってもらいたいものです。