石破氏の「アジア版NATO」構想は実現不可能

 

石破氏によるアジア版NATOの呼びかけは非現実的であり、インドやアセアンを含むインド太平洋地域の主要関係者を遠ざける恐れがあると警告されています

 

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石破氏は米国やインド政府から否定され一度は引っ込めたかに見えたアジア版NATOを再度持ち出しました。

昨日、アジア版NATO構想を議論する新組織を設置するよう小野寺五典党政調会長に指示したそうです。

これについて海外メディアは「石破氏は自身の提案の戦略的影響を誤算したようだ。」と指摘しています。

どの様に非難されているのか見てみましょう。


インド太平洋地域の政治、社会、文化を扱う「The Diplomat 」誌からの批判

中国は安倍首相のインド太平洋構想をベースにしたクアッドを「アジアのNATO」と激しく批判しており、米国のインド太平洋戦略はファイブアイズ、クアッド、AUKUS、そして様々な二国間安全保障条約から成る「5-4-3-2」方式で、中国を封じ込める為に考案されたものだと考えています。

米国のアジア同盟国である日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドは、しばしば「インド太平洋4カ国」と呼ばれ、ロシアのウクライナ侵攻後、NATOとの協力を強化しています。一方、石破氏のアジア版NATO結成の構想は非現実的であり、この構想を推し進めれば、インドやASEANを含むインド太平洋地域の主要利害関係者を遠ざける事は間違いないと思われます。

石破氏は自らを「防衛オタク」または「防衛マニア」と称しているが、同氏の政策発表には戦略的明確さが欠けている。

石破氏はアジア版NATOの提唱者だが、国内で適切な議論をせずに首相の立場で中途半端なアイデアを世界に流布する事は、日本とっては避けるべき事態です。

石破氏のアジア版NATO構想は、既に地域レベルでは失敗に終わっています。

今週、石破氏が初めて参加したASEAN関連首脳会議でも、この構想は重要な議題には上がらないでしょう。

※その通りになり、アセアン諸国から警戒され距離を取られました。

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岩屋外相は、アジア版NATO構想は中長期的に検討すべき構想であると示唆する事で、インド太平洋地域の動揺を鎮めようとしているそうです。

アジア版NATOを説明する際、石破氏は特に、中国による台湾侵攻を抑止する為に必要なのだと主張しており、今年初め、台湾の頼清徳総統との会談では、石破氏は抑止力を高める民主主義諸国の連合の必要性を強調していました。

しかし、アジア版NATOに中国を含めたいとも言っています。

※これでは一体何に対する集団防衛なのか分かりませんし、アジア版NATO自体の存在理由がありません。クワッドで良いのでは。

更に日本は現行の憲法上の制約の範囲内で集団的自衛権を依然として十分に行使できないのが現実です。石破氏は所信表明演説で物議を醸す話題は殆ど避け、「アジア版NATO」への言及だけでなく、日本の非核三原則に反する核抑止力強化や核兵器共有といった重要な話題も避けていました。彼は就任以来、日米同盟の非対称性のバランスをとる為に日米地位協定(SOFA)を改正し、グアムに自衛隊を駐留させるという以前の主張についても沈黙したままです。

石破氏が本気でアジア版NATO等をやりたいのであれば、先ずは憲法改正からやるのが道筋ですが、そういう話は彼の就任以来聞こえてきません。

本来、国益を優先するならば、安倍総理の提唱したインド太平洋戦略・クワッドを強化すべきですが、石破氏はフラフラフラフラと発言を翻し、対中政策もかなり危なげです。

元々親中派だった石破氏は対中政策について、抑止力を強化すると同時に「共通の戦略的利益に基づく互恵関係を推進」するための対話を深めるアプローチを取りたいと言っており、「あらゆる可能なレベルで(中国と)緊密なコミュニケーション」を追求すると約束までしています。

昨日、石破氏と中国首相の李強がアセアンで会談しましたが、そこでは技術革新、デジタル経済、グリーン開発などの分野での日中協力推進が約束されていました。

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李強「中国は日本と協力し科学技術イノベーション、デジタル経済、グリーン開発などの分野における協力の新たな成長点をさらに模索し、輸出管理対話メカニズムを有効に活用し、産業チェーンのサプライチェーンとグローバル自由貿易システムの安定性と円滑性を共同で守っていきたい。(欧米の対中貿易制裁に風穴を日本が空けてくれ) 日中は、地域、文化、スポーツ、青少年の交流とコミュニケーションの発展をより力強く支持し、両国国民の相互理解と友好を絶えず増進させるべきである。 中国は、地域の平和、安定、繁栄を促進する為、日本との多国間協調・協力を強化する事を望んでいる。」

石破茂「日本と中国は現在、両国の戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的で安定した二国間関係を構築する方向に進んでいる。 日本は中国との未来を見据え、ハイレベルの交流、あらゆるレベルでの緊密な対話と意思疎通を強化し、協議を通じて未解決の問題を解決し、引き続き互恵協力を推進することで、日中関係を安定的かつ遠大な未来へと前進させることを望んでいる。 日本は中国から「離脱」する意図はなく、様々な分野における実務的な協力を深め、その成果が両国の国民に恩恵をもたらすことを望んでいる。 (日本はこれまでの様に中国に日本企業をどんどん送り込み、中国からも移民をどんどん受け入れる。技術提供もします。貿易制裁には加わりません)日本側は、日中共同宣言で示された台湾問題に対する立場を変えていない。(日本は台湾を国とは認めていない。麻生さんが先日台湾を国と呼んでいたのと対照的) 日本側は、国際問題や地域問題について中国との意思疎通を強化し、課題に対処していく所存である。

石破氏は李強に日本産牛肉の輸入再開や中国への日本産米の輸出拡大などについて改めて議論を求め、環境・省エネ(中華EV、中国産太陽光パネルや風力発電施設の日本への輸入です)や医療・介護・ヘルスケア(日中での老人介護、医療ツーリズム)などのグリーン経済での協力を推進するよう提案したとの事ですが、とんでもない話です。

アリバイ程度に中国が設置したブイ問題を含む東シナ海情勢や、中国軍機の日本の領空侵入など日本周辺地域での軍事活動の激化に対する日本側の深刻な懸念、日本人学校の少年刺殺についての懸念を改めて表明はしていますが、これではお話になりません。