「ミレイは既に左翼の経済体制が間違っている事を証明している」と英国主要紙テレグラフ。
アルゼンチンは歴史的に失敗した政府であり、経済破綻、債務不履行の国です。しかし信じられない事に、あらゆる困難にも関わらずリバタリアンであるミレイ大統領の大胆な自由市場改革によりインフレ率は下がり金利も低下、功を奏し始めていると報道されています。
ミレイはより大きな政府と際限のない赤字に依存する、世界の左派経済体制が間違っている事を証明しつつあります。実際、これは他の国々がゼロ成長から脱出する為のひな型を提供するかもしれません。
アルゼンチンインフレ率(月間)
去年末爆発的に上昇したアルゼンチンの月間インフレ率は急減していました。
月間インフレ率は11%まで下がり、ミレイ氏は更に下がると予測しています。
年間300%を超える高騰を経て、物価上昇は再び抑制されつつあるのかもしれません。
先週、ミレイ氏は2008年以来の四半期黒字を記録したと発表しました。GDP比0.2%という控えめな数字ですが、過去123年間のうち113年間赤字だったアルゼンチンにとっては、短期間での驚くべき成果です。
この成果についてミレイ氏は「財政黒字はアルゼンチンの新たな繁栄の時代を築く基礎となる」「政治、労働組合、メディア、経済関係者の大多数が我々に反対しているにもかかわらず、我々は不可能を可能にしている」と宣言した。
「国家が集めた以上に支出せず、(お金を)発行しなければ、インフレは起こらない。これは魔法ではありません」とも。
今週初め、ミレイ氏が公約に掲げた「中央銀行の廃止」にはまだ至ってませんが、中央銀行はこの3週間で3度目の利下げを行いました。
金利はまだ50%台と高水準ですが、これは直ぐに経済に反映され始め、投資家もそれに気づき始めていると言われています。
ブルームバーグのデータによると、ブルーチップ・スワップ市場では、ペソは今年第1四半期に世界で最もパフォーマンスの良い通貨となり、債券市場も上昇しています。
アルゼンチンの物価が安定し通貨が上昇すれば、天然資源が豊富で賃金コストの競争力が高いこの国に、再び投資が流れ込みそうです。
ミレイ氏が米国で安全性と成功が証明された技術を使って、国内に埋蔵されているシェールオイルとガスの採掘を開始するという約束を果たす事ができれば、アルゼンチン経済は好景気に転じる可能性さえあると言われています。
※ミレイ氏は公共支出を削減し、国営企業を民営化する事も約束しており、これは必然的にエネルギー業界の関心を集めています。
国際エネルギー機関 (IEA) によると、アルゼンチンはシェールガスの埋蔵量は世界で 2 位、シェールオイルの埋蔵量は世界で 4 位です。
もしミレイのやり方でアルゼンチンが復活するのであれば、そのやり方はより大きな政府、より多くの規制、そして財政赤字の増加に依存する世界的な経済体制に逆らう事になります。
※米国の債務負担はここ数カ月で急速に増加しており、ほぼ100日ごとに約1兆ドル増加しています。
西側諸国は、バイデン大統領とその信奉者達から積極的な国家運営(脱炭素とか)、産業戦略、投資費用を賄う為の借り入れ増加の必要性と規制は、産業と経済のリーダーシップの鍵であって敵ではない、と説教され続けています。
一方IMFは、過去の失敗したアルゼンチン政権の大応援団であり、アルゼンチンに史上最大の融資を行った組織です。
ミレイが選出された時、彼は狂人であり数週間とは言わないまでも、数カ月以内に罷免されるだろうと見なされていました。ミレイがこうした主要メディアのシナリオが間違っていた事実を証明する事で、英国のリズ・トラス政権が短期間で大失敗に終わった後でも、自由市場改革は不可能ではない事を示すことになるかもしれません。
では、どのようにして彼は、陳腐な経済正統派にこれほど大きな衝撃を与えようとしているのでしょうか?根本的には彼は大きな決断を下しました。
・第一に、議会で多数派を占めていないにも関わらず、政府の全省庁を一夜にして閉鎖しました。文化省は廃止され、反差別機関や国営のニュースサービスも廃止されました。先月には更に7万人の国家公務員を解雇する計画を発表したばかりです。
ミレイ氏は、段階的に削減したり、予算を管理したり、早期退職や雇用凍結で人々を緩和しようとしたりはしておらず、代わりに彼は約束通り、国家システムに大胆な改革を持ち込み、その過程で莫大な節約を齎しました。
・第二の大胆な決断。ミレイ氏は大統領就任初日に財政的打撃を先取りしてペソを大幅に切り下げ、その後家賃規制、価格制限、国家補助金を廃止しました。
労働者の権利を縮小し産休や退職金を削減、企業がストライキを行った労働者を解雇する事を認めました。
一時的なインフレの急上昇に繋がりましたが、彼は燃料補助金を剥奪しました。確かに、短期的な痛みはありましたが、その結果は今明らかになりつつあります。
例えば、家賃は年間20%下落しています。
規制から解放され、より多くの供給を市場に供給するようになったからです。
ミレイ氏は何故こうした改革が正当化されるのか、そしてそれが長期的には誰にとってもより大きな繁栄を齎すのかを、辛抱強く粘り強く説明しています。
先進国の多くが、特にイギリスはミレイが登場する以前からアルゼンチン型の停滞に徐々に陥っています。
西側政府は補助金と価格統制にとりつかれ、支出を増やす事であらゆる困難から逃れようとしています。
赤字は容赦なく増え続けそれを再び減少させる、意味のある計画ではない様です。腐敗した縁故資本主義が栄え、競争を殺してもいます。
しかし現在、アルゼンチンの指導者はそこから脱却する為の青写真を提示しています。世界の経済エリートは、痛ましいほど結果が出ないにも関わらず、何故より多くの政府とより強力な国家が必要なのかを説き続けていますが、アルゼンチンはそれに今までにない形で挑戦しています。
それが功を奏し始めているかもしれません。
アルゼンチンの長年にわたる経済苦境の原因は何ですか?
アルゼンチンでは持続的な財政赤字と慢性的なインフレが長年の問題となってきました。 1944 年から 2023 年までのインフレ率は平均 190% で、政府は国債のデフォルトを 9 回発生しました (そのうち 3 回は過去 20 年間に発生しました)。
アルゼンチンは 2009 年以来財政赤字を継続しており、その不足額は 2023 年には GDP の 4.4% に達しています。
過去10年間でこの国は一人当たりGDPが10.4%減少し、ソブリン債務不履行や再編の歴史により国際信用市場の金利が法外に高くなっています。その結果、戦略は財政ギャップを補う手段としてインフレ税への依存度を高める事になりました。
これによる避けられない結果は、アルゼンチンペソの価値の下落と公式為替レートへの重大な圧力です。通貨安を防ぐ為の政策対応は価格と資本の規制、複数の為替レート、マイナスの実質金利、量的輸入制限、輸出税に頼る事でした。
しかし、これらの政策は相対的な価格の歪みを悪化させ、公式市場為替レートと非公式市場為替レートの差を拡大させ、中央銀行のバランスシートの悪化に繋がった為、単なる一時しのぎとして機能してきたに過ぎません。
為替レートの操作は貿易の流れを人為的に歪め、輸入業者が輸入を前倒ししたり、輸出業者が将来の通貨切り下げを見越して輸出品に誤請求をする事を促します。これにより、中央銀行は外貨準備を枯渇させ、貨幣創造による過剰流動性を吸収する為に発行される紙幣や債券である有利子負債を増加させました。例えば、ミレイ氏が就任する前、中央銀行はGDPの11.3%相当の有利子負債を抱え、110億ドルを超えるマイナスの純外貨準備高を抱えていました。
こうした歪みは実体経済に大きな打撃を与えてきました。投資は 2011 年から 2023 年の間に僅か 1.1% の増加に留まっており、世界銀行のデータによると、銀行による民間部門への信用は 2022 年には僅か10.7% に留まりました。これに対し、ラテンアメリカとカリブ海地域全体の平均は 47.4% でした。アルゼンチンの一人当たりの輸出も、2011 年から 2021 年の間に 27.3% 減少しました ( Atlas of Economy Complexity )。
しかし、アルゼンチン経済は繁栄する可能性を秘めています。アルゼンチンには農業、石油・ガス、リチウム、情報技術、ソフトウェア開発などのハイテク活動(ほんの数例)など、持続的成長に向けた多くの道があります。
度重なる経済不安により、これらの高い可能性が損なわれて来ました。しかし、財政的に実行可能な国家を創設すれば、国民の貯蓄と資本の流れが増加し、金利と為替リスクが軽減され、投資と成長に適した環境が可能になります。
産業は存在しますが、より広範な経済状況が進歩の足かせとなっていました。ミレイ氏はこうした国家の根本的な問題に対して劇薬的な方法で切り込んでいっている様です。