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ウクライナのゼレンスキー大統領は2月23日開催された「ウクライナ2025年」フォーラムで、ウクライナが米国に5000億ドル(75兆円位)の負債を残すことになる合意は承認しないと発表。
ゼレンスキーは、ウクライナの天然資源に関する米国の合意条件は援助というよりは債務義務に近い、と強調しています。
「我々が1000億ドル(15兆円位)を受け取ったことは理解しているが、誰が何と言おうと、パートナーたちに敬意を表しつつも、5000億ドル(75兆円位)は認めない」とゼレンスキーは発言し、バイデンとの合意では財政支援は融資ではなく助成金として分類されていると強調しました。
「助成金だから負債ではない。私は1000億ドルを負債として認識していないし、負債として受け入れるつもりもない」と。
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ゼレンスキーは、将来のウクライナの世代に経済的負担を強いるようないかなる協定にも署名しないと明言し、トランプ政権下での新協定の可能性については次のように述べました。
「もしトランプ大統領が、新たな援助に対して我々が資金を返済するという新たな合意に署名する用意があるなら、我々はそれに応じる用意がある」
「米国との天然資源協定の条件ではウクライナは受け取った金額の2倍を返還する必要があるけど、このやり方は不公平だし、イスラエルにはあんなにトランプは甘いのにウクライナにはやたら厳しい条件を課すのはおかしい。米国がイスラエルやカタールに武器を売った場合、こんな条件出さないでしょう?」と。
この事について話したいからとゼレンスキーはトランプに新たに会談を要求。
この状況に対して米国民とウクライナ国民の間で再び対立が広がっています。
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米国民の意見
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この様に米国ではゼレンスキーの今回の発言に対して反発が広がっていますが、実際はゼレンスキーが言っているようにこれまでウクライナへ渡された資金は寄付です。
バイデン政権がウクライナに提供している安全保障支援には、返済義務が伴わない無償支援と、場合によっては返済が求められる融資(ローン)の要素があります。しかし、主に米国がウクライナに対して行っている軍事および人道的支援の多くは、寄付や無償提供の形を取っており、返済義務はありません。
具体的には、米国の「ウクライナ支援イニシアティブ」などの枠組みの中で、資金や武器、物資を無償で提供しています。一方で、国際財政支援やインフラ再建などの分野では、長期的な返済が含まれる場合もありますが、それは支援の種類や契約条件によります。支援の詳細は、米国政府の発表内容や関連文書で明らかにされています。
したがって、この件で共和党支持者が追及すべきなのはゼレンスキーではなく、バイデンでしょう。
ウクライナに対する米国の援助金1000億ドル(15兆円)はどこに消えたのか?
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2月2日、ゼレンスキー大統領は米国がウクライナに費やした1750億ドルのうち、自分が受け取ったのは750億ドルだけだと述べて物議を醸しました。
残りの1000億ドルはどうなったのか、失われたのか盗まれたのか?という声が上がったのです。
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答えはノー。援助の一部だけがウクライナの管理下を通っています。大部分は戦争の結果生じた活動に充てられたが、ウクライナに直接支払われたものではないそうです。
これには、米国によるウクライナ軍の訓練、世界的な人道支援、欧州における米国の増派部隊の追加費用、NATOとウクライナ両国に対する諜報支援などが含まれていたとの事。
ゼレンスキー大統領の2月2日のAP通信とのインタビューでした発言です。
「アメリカがウクライナに数千億ドル、正確には1750億ドルを与えたと聞き、戦争中の国の大統領として、私たちが受け取ったのは750億ドル強だと言える。私たちが話しているのは具体的なものについてだ。なぜなら私たちはお金ではなく武器でそれを得たからだ。訓練や追加の輸送があり、武器の価格だけではない。人道的プログラム、社会福祉などもあった。この1750億ドルのうち1000億ドルは私たちは受け取っていない。ウクライナが戦争中に軍を支援するために2000億ドルを受け取ったと言われているが、それは真実ではない。そのお金がどこにあるのか私には分からない。」
ゼレンスキーのこの発言を受けてメディアのコメント欄は汚職や不正行為の非難で炎上。
オンラインコメンテーターは、CIA、ウクライナ当局者、またはジョー・バイデン前大統領による汚職にに使われたのではないかと推測しました。中には米国国際開発庁(USAID)がウクライナを訪問する有名人に支払いをする為の資金に使われたのではないかと疑う者も。
これを政府の浪費の証拠として挙げ、政府効率化省(DOGE)が調査して削減を特定することを提案する者もいました。DOGEは以前、米国政府がウクライナへの援助を追跡する能力について懸念を表明していた。国会議員やDOGEを率いるイーロン・マスクは、援助の不正使用を疑問視する投稿ををリツイートしていました。
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トランプ政権のウクライナとロシア担当特使キース・ケロッグ将軍はこうした解釈を否定。同氏は「我々は資金がどこへ使われているかかなり正確に把握している」とし、割り当てられた資金の大半は米国内で使われていると述べました。
それで、「行方不明」の1000億ドルはどうなったのですか?
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CSIS(戦略国際問題研究所)が言うには、資金が不足しているわけではないそうです。資金は(主に)戦争によって生じた活動に使われ、すべて把握されていると。
一部はウクライナに直接機材や資金を送るために支払われました。大部分は戦争によって生じた活動に使われましたが、ウクライナでは使われませんでした。なぜそうなっているのかを知るには、資金全体を見ることが重要です。
2022年以降、議会はウクライナ戦争の結果として1752億ドルの援助を計上しており、ゼレンスキーが挙げる1770億ドルとは若干の差があります。これには5回の補正予算の資金すべてと通常予算の9億ドルが含まれ、90億ドルの融資は含まれません。大半はすでに支給されており、残りのほとんどは契約や拘束力のある約束によって使用用途が義務付けられています。すべての契約が完了し、資金が支払われるまでには何年もかかる様です。
これまでの分析で、CSIS はウクライナへの援助をさまざまな目的を示すためにいくつかのカテゴリーに分類してきました。
図 1 は 1,750 億ドルが 7 つのカテゴリーにどのように分類されているかを示しています。ゼレンスキーが挙げた 750 億ドルと「行方不明」の 1,000 億ドルがすべてそこにあるとCSISは主張しています。
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①軍事装備:ウクライナに送られた米国の装備など(大統領引き出し権限を通じて)
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②米国の産業基盤と国防総省(DOD)の一般支出:米国の軍事力、特に防衛産業基盤を強化する項目だが、ウクライナ戦争とは直接関係しない。
③ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI):主にウクライナが米国の製造業者から直接装備品を調達するための資金であり、ウクライナの装備品の保守、ウクライナの人員と部隊の訓練、およびウクライナ関連の諜報活動も支援します。
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④米軍人件費など:ロシアの侵略に応じてヨーロッパに増派された米軍の追加費用のための資金。これらの増派部隊の一部は米国に帰還したが、その他の部隊は留まっている。
⑤人道支援:戦争による苦しみを和らげるための支援。主にヨーロッパの非政府組織を通じてウクライナ難民のために行われますが、一部は米国とウクライナで使われ、予算の一部は世界的な食糧支援にも使われます。約 30 億ドルが戦争とは関係のない国際開発に使われました。
これを計上するのは少しおかしいのでは・・・
⑥経済支援:失われたウクライナの税収を補い、政府サービスの運営を維持するために、米国からの資金が世界銀行を通じてウクライナ政府に提供されています。
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⑦その他の米国機関の為の資金:国防総省、国務省、USAID 以外の米国機関の活動のための資金。たとえば、財務省によるロシアへの制裁の執行やエネルギー省によるウクライナの核物質保護など。
こうした資金の大半はウクライナに直接届けられるのではなく、信頼できる機関、主に米軍、国務省/USAID、世界銀行によって扱われているとCSISはしています。
CSISはバイデン政権がウクライナに渡した莫大な資金について清廉潔白な使い方をしているように言っていますが、実際はそうでもありません。
ポリティコが2023年に入手した米国の機密戦略文書によると、バイデン政権当局者は、ウクライナの汚職について、公に認めているよりもはるかに懸念していたことが分かっています。
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米国の機密戦略文書ではキエフの不正行為を根絶し、ウクライナのさまざまな部門を改革するためにワシントンが講じている数多くの措置が記載されており、ウクライナの汚職により西側同盟国がロシアの侵略に対するウクライナの戦いを放棄する恐れがあり、キエフは汚職撲滅の取り組みを先送りすることはできないと強調されていました。
機密文書は、「高官の汚職の認識」が「ウクライナ国民と外国指導者の戦時政府への信頼を損なう可能性がある」と警告。
政権はウクライナに汚職の削減を迫りたいと考えていました。特に汚職に米ドルが絡んでいるからです。
しかし、この問題について声高に主張しすぎると、ウクライナへの米国の援助に反対する人たちや共和党議員を勢いづかせることになるかもしれないと恐れていたようです。
ウクライナのロシアとの戦争中に見られた腐敗の具体例は、政府関係者が軍事予算を略奪し、詐欺を通じてその腐敗を隠す行為が含まれます。例えば、実際には提供されていない軍事資材を調達したと偽って請求書を提出するケースが報告されています。CSISはウクライナにはびこる汚職に目を瞑っています。
地方政治や司法、公共セクターにおける賄賂や政治的腐敗も問題視されています。これらの腐敗行為は、戦争の混乱を利用して行われることが多く、国の透明性や信頼性を損なっています。
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過去10年間、欧州連合(EU)加盟の可能性を高めるため汚職対策を強化してきたが、戦争で荒廃した同国では依然として汚職スキャンダルが蔓延しており、数十億ドル規模の復興計画が新たな私腹を肥やす機会を齎しています。
興資金の横領疑惑は、ウクライナが西側諸国からの財政支援に依存している中で恥ずべき問題となりつつあり、ウクライナ国家汚職対策局によると、2023年には約500件の汚職事件が捜査され、60件で有罪判決が下されています。
現在、日本のメディアはトランプを叩きたいが為にこうした状況を伝えていません。