先日バンガードが世界最大の気候変動対策金融連合から離脱する声明を出しましたが、これは今後どのくらいの影響があるのか?というご質問についてです。
結論から言うと、バンガードの離脱は世界の金融業界全体を揺るがすほどの金額ではありません。
しかしながら、バンガードの離脱はESG投資への疑問を世界に投げかける事になり、社会的な影響は甚大でした。
その証拠に米国大手メディアですら最近は盲目的なESG投資への非難を始めています。
例えば、ブルームバーグは「ESGはもう誰も納得させない。ワールドカップを見よ。
カタールで開催されたワールドカップを見れば、ESGの概念がいかに崩壊しているかがわかる。」といった記事を掲載しました。
ここで叫ばれている情勢は保守言論界だけに収まらず、大手メディアでも報道される様な大きなトレンドになりつつある事は事実でしょう。
ESG投資額の推移
こちらはブルームバーグのESG投資額の推移予想ですが、順調に増加すると予想している事が分かります。
資産運用会社PwCは世界のESG関連の運用額が2021年の18.4 兆ドル(2480兆円位)から2026年までに33.9 兆ドル(4570兆円位)に拡大すると予想。
年平均成長率は12.9%と予測し、5年以内にESG資産は世界の総資産額の21.5%を占める勢いであるとしています。
こちらはファンドの上位10カ国(運用資産額およびファンド数)、2020年度です⇩
この様に世界の金融機関はESG投資は今後も右肩上がりで成長すると思っていました。
しかし・・・・
最近雲行きが怪しくなってきてます。
投資家は今年、ESGファンドから資金を引き出し始めた
Reutersは今年に入り投資家が資金を引き出しはじめ、ESG関連ファンドから1月~9 月末までに世界全体で1,080億ドル(15兆円程度)流出させたとの事。投資家が気候変動への取り組みなどの目標よりも資金の保全を優先させたため、ESGファンドは空前の資金流出に見舞われていると報道しています。
原因を平たく言えば、投資家がESGファンドから離れたのはあまり儲からないからですって。
2019年くらいからESGファンド残高は右肩上がりで伸びてきましたが、ここに来て成長がストップ。
日本を除くアジア地域のESGファンドが、2022年第3四半期に約6億6000万米ドルの資金流出を記録したと、ファンドの評価機関として市場で大きな影響力を持つモーニングスターも発表しています。
ブルームバーグによると「ESG業界、格付け会社、ファンドマネージャーには手数料がどんどん入るので儲かっているかもしれないが、彼らの顧客はそうではない。」との事。
世界の機関投資家向け投資分析会社インベストメント・メトリクスも、2022年上半期に世界のESG株式商品の約78%がベンチマークを下回った(ただし2019年からの3年間では80%が儲かっています)と発表しています。
最近のESG投資に対する世論調査では、投資家がESG投資に対してますます懐疑的になっている事が明らかになっており、60%がESGに投資を検討していると答えていますが(昨年の65%から減少)、58%はファンドマネジャーのESGに関する主張に納得していないと答えています(48%から上昇)。
どうやら勢いが止まってきている様です。ロシアのウクライナ侵略による混乱、インフレの影響は勿論ありますがそれだけが原因ではなく、アバウトな脱炭素戦略も原因となっています。
バンガードに対してアルゴアら環境保護活動家がESG投資に戻るように圧力
バンガード・グループは、アル・ゴアら大物環境活動家から激しい批判を受けており、利害関係者に対し、バンガードが依然として気候変動対策に配慮している事を誓うよう圧力を受けている。
脱炭素の為のファンド、ジェネレーション・インベストメント・マネジメントの会長を務めるアルゴア元米国副大統領は、気候変動対策への投資を民間資金に求めるよう国連から依頼を受けた気候変動金融同盟グラスゴー金融同盟(GFANZ)からバンガードが脱退した事を「無責任で近視眼的」と非難し、時代の流れから外れていると騒いでいます。
アルゴアは気候変動対策を「あなたの世代の生死をかけた闘い。」等と表現しこの分野にのめり込んでいるようです。
余談ですが、娘の
カレンナ・ゴアも激しい環境保護活動家で脱炭素を推進し、ジェイコブ シフの曾孫であるアンドリュー ニューマン シフと結婚しています(現在は離婚)。
他の多数の団体からもバンガードは非難されており、バンガードは現在、GFANZから手を引くという先週の決定の余波を抑えようとしているところ。
共和党は反対にバンガードがESGに関与する事を非難しており、上院銀行委員会の共和党スタッフは米国最大の資産運用会社ビッグ 3(BlackRock、Vanguard Group、State Street Global Advisors)による株主総会での「影響力の拡大」を抑制すべきとの報告書を出しています。
「これらの企業は、ESG(環境、社会、ガバナンス)やDEI(多様性、公平性、包括性)と呼ばれるリベラルな社会的目標を推進するために、投資家の資金を元に議決権を堂々と使っている。ESGは財務業績と切り離された政治運動だ。」と非難。
バンガードの離脱は世界的なESG投資への見方の変化の結果現れた一つの事象なのかもしれないと思っています。
バンガード以外の金融機関にも変化が見られるからです。
9月、Financial Timesは、バンク・オブ・アメリカやJPモルガンを含むいくつかの銀行が、偶然にも国連の気候変動規制に抵触し、その約束に対して法的責任を問われることを懸念し、GFANZからの撤退を検討するようになったと報じました。
ESGというイデオロギーだけでは実際の利益は上がらず、ポンジスキームみたいな状態になるのではないでしょうか?
また、本気で気候変動対策(温室効果ガス削減により世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える)をしたければ、西側諸国は考えなければならない事があります。
西側諸国はコストが安いからと中国に製造を任せてますが、その環境を無視した中国での生産活動に依存する事により世界の温室効果ガスは増加しています。
⇧2018年世界二酸化炭素排出量
現在のESG投資は穴の空いたバケツにコミットメントしている様な物で、西側先進国すべて合わせても、中国一国の出す温室効果ガス排出量には敵いません。
中国にメスを入れなければ二酸化炭素排出量は何年かけても減る事はなく、そこを触らずESGに2026年までに33.9 兆ドル(4570兆円位)入れるなどと正気とは思えませんよね。
また、中国は自国ではなく各国が行う「炭素排出量ゼロ」が大好きで、著しい石炭を使って石炭火力発電所を稼働させ工場を回し、風力発電機、ソーラーパネル、電気エンジン、レアアース電池などを製造し、世界に向けて販売しまくっています。
この中国の焼け太りを推進してるのが西側のESGであり、正に偽善の塊。
⇧こちらは日本の温室効果ガス排出量ですが、お金無理に使わなくても充分すでに下がっています。世界から見ても日本の数値は僅かなもの。
もういい加減にこんな茶番に付き合うのは止め、日本は自国の産業競争力強化を原発と世界一クリーンな石炭火力発電で行えば良いのです。
バンガードには石炭火力発電に投資してもらいたいものですね。
数字で結果を出しているのですから。