
スランプ状態のドルはトランプに関税の『逃げ道』を与えるのか?
ブルームバーグ マクロストラテジストの見解。
ドルの下落は、アメリカ国内での関税の影響を増幅させ、ホワイトハウスに対する政治的な圧力を強める事になります。
しかし、他国の通貨の強化(円高やユーロ高)は、依然として厳しい関税を更に緩和する為の便利な「出口」をトランプ政権に与えると見られています。
今回のドルの下落は、歴史的なレベルと言えます。
現在、DXY指数における今回の2日間の下落は1971年まで遡るデータの中で15位、全ての2日間の変動の上位0.1パーセンタイルに位置しています。
ドルが安くなると、輸入品のコストが上昇し、国内インフレが進む可能性があります。このインフレが、長期債券の利回りに影響を与えます。

ただし、全ての通貨がドルに対して上昇しているわけではありません。
関税が4月2日に発表されて以来、スイスフラン、円、ユーロが最も上昇しており、スイスフランと円は、ドルがその役割を疑われ始めた世界の中で「新たな避難先」として機能している様です。
ドルユーロ

トランプ政権にとっては問題視される通貨も多く、インドネシアルピア、中国人民元、インドルピー、ベトナムドン、豪ドルのいずれもドルに対して弱くなっています。

ドルルピー

アメリカにとって最大の課題は中国です。
ドル元

両国は二国間貿易戦争の最中であり、お互いに関税率を滑稽なほど高いレベルまで引き上げていますね。
インフレ期待が高まると、投資家は将来の利上げを予想し、長期債券の利回りが上昇します。
これは、ドル安によって資産の価値が減少し、投資家がより高いリターンを求める為です。
米国債10年物利回り⇩

人民元はドルに対して弱まっていますが、中国はその下落に歯止めをかけており、上限に近い位置で膠着しています。
その代わりに人民元の弱さによる多くの影響は、他国の通貨に押し付けられている状態です。
しかし、ドルの弱さが過度になれば、今度はアメリカ側にとって問題になってきます。
ドル高、輸入価格(石油を除く)、関税の影響は相関関係にあります⇩

弱いドルの関税への影響: 弱い米ドルは関税の影響を増幅させる可能性があります。関税は輸入品のコストを引き上げますが、ドルが弱くなると、外国通貨に対する購買力が低下する(アメリカ国内から見て)為、これらのコストが更に増加します。
その結果、アメリカの消費者にとって価格が上昇する可能性があり、今後発表される消費者物価指数などに反映されてくる可能性が高いのです。
この為、関税が発動された後の来月からの指標の結果はかなり重要です。
各指標が悪化する度に米国株が下落して、それと共に日経先物が下落し、翌営業日の日経寄り付きに反映されます。
世帯の上位10%が世帯部門が所有する株式全体の87%を所有しています。
「メインストリート」への焦点: トランプ政権は、裕福な投資家(「ウォール街」)を優遇する政策から、より幅広い国民(「メインストリート」)に配慮した政策への転換を示唆しているようです。ベッセント財務長官の発言は、一般消費者に利益を齎すよう経済政策のバランスを取ろうとする試みを示唆しています。
貿易とドルのダイナミクス: 弱いドルはアメリカのメーカーが国際的に輸出価格を下げる事を助ける可能性がありますが、ドルが過度に弱くなると逆効果を招く可能性があります。
また、ユーロや円、あるいは中国人民元のような主要な外国通貨がドルに対して強くなる場合、アメリカはこの状況を利用して、高い関税率を緩和する事を正当化し、それを貿易交渉における勝利として位置付ける事ができるかもしれません。