まず最近起きたばかりの事件から。
2023.1.26、韓国の国産半導体チップの中核技術である化学機械研磨(CMP)技術を、高給を餌に中国共産党に流出させたとされる韓国企業の社員6人が捜査を受け、裁判を受ける事になりました。
⇧こちらその裁判資料です。
1月26日、韓国知的財産庁の技術警察と検察は1月26日、産業技術保護法と不正競争防止法違反の疑いで3人を拘束して起訴し、3人を拘束せずに起訴したと発表しました。
韓国特許庁によると、彼らは会社の機密情報を個人の携帯電話で撮影し、中国企業に情報を流出させた疑いが持たれています。
中国企業に提供された情報には、半導体チップの研磨に関する最先端技術や企業秘密が数多く含まれていた様です。
調査の結果、2018年に勤務していた企業の昇格選考から外れた主犯格のA(55歳)は、2019年6月に中国企業と半導体チップ向け化学機械研磨 (CMP )の製造事業を共同で行う事に合意し、その後もそのまま韓国企業に勤務(スパイ活動スタート)。チャットツール等を通じて中国での設備建設や事業管理を行っていた事が判明しました。(会社の技術をそのまま中国にコピーしていたものと思われます)
その後、Aは他の韓国企業に勤務していたB(52)、C(42)、D(35)をリクルートし、3人は2019年9月から中国企業に勤務、それぞれ副社長、チームリーダー、チームメンバーの役職に就任。その後2020年5月にAが中国企業のチームリーダーレベルの役職に就いていました。
中国での年俸は、韓国での年俸の2〜3倍以上である事が確認され、さらに中国現地では様々な優遇措置を受けていた事も分かりました。
Aが勤務していた会社は、流出した情報が中国に公式に利用される前に事件が発覚し、さらなる損失を回避する事ができたとの事。
ダメージを受けた企業はA社が半導体ウェーハ 研磨剤・パッド(CMPスラリー‧パッド) 製造、B社 :が半導体ウェーハ研磨剤(CMPスラリー) 製造、C社が半導体メモリ製造。A・B・C社は全てコスピまたはコスダック市場の上場会社でした。
2022.1.16、サムスン電子の主要子会社であるSEMESが開発した世界初の超臨界半導体洗浄装置のコア技術を中国に流出させたとして、検察はSEMESの元研究員と仲介業者(中国籍)ら5人を起訴
SEMESは、サムスン電子が1993年に設立した半導体・ディスプレイ製造装置を生産する重要な子会社です。
同社は、基板へのダメージを最小限に抑え、超小型半導体の欠陥率を下げる事ができる超臨界半導体洗浄装置を製造しており、韓国通商産業エネルギー省はこの装置を国家中核技術に指定していました。これが漏れた。
起訴された5人の中には、2016年に同社を辞め、2019年に独立した元SEMESの社員も含まれていました。
SEMESのパートナー企業のCEOを通じて入手した超臨界半導体洗浄装置の主要図面を、2021年6月に技術流出ブローカーに渡した疑いが持たれており、ブローカーはSamsungが世界で初めて実用化した超臨界流体を用いたウェハ洗浄・乾燥装置の図面を中国に販売。
捜査当局は、元SEMES社員らが2019年12月から2022年7月にかけて洗浄装置20台を輸出し、1193億ウォン(128億円程度)の利益を得ていた事を明らかにした。
また、元SEMES社員は、同じく逮捕・起訴された元SEMES研究員と共謀して、2021年にSEMESが開発した枚葉式洗浄装置の情報を自分の会社の従業員に漏らしたとして起訴された。枚葉式リン酸洗浄装置はの装置の開発に成功したのは、世界で韓国のSEMES社と日本の芝浦製作所の2社のみ。
「2009年から2021年まで、SEMESは超臨界技術の研究開発に約350億ウォンを投資した」「この犯罪により350億ウォン以上の直接的な損失が発生した。SEMESの技術力低下により、SEMESへの受注が10%程度減少した場合、毎年400億ウォン以上の損失を被ることが懸念される。」と検察関係者は指摘しています。
※SEMESの生立ち。実は元は日本企業の技術でした。
1993年韓国サムスン電子はニコン、大日本スクリーン製造(のちのスクリーン)など日本の装置メーカーに、サムスン電子向けの洗浄装置を韓国内で作るように求め、多くの日本メーカーは、技術流出を恐れてそれを拒否。
しかし、スクリーンがサムスン電子の要求に応じて、1993年1月にサムスンと合弁でK-DNSを設立。スクリーンは当時「大日本スクリーン製造」という社名で、DNSと略されており、K-DNSとは「KoreaのDNS」という意味と言われています。
K-DNSにはスクリーンの技術者が多数派遣され、サムスン電子用の洗浄装置はここで製造されることになり、その後もK-DNSはサムスン電子用の洗浄装置を供給。そのK-DNSは 2005年1月に社名を現在の「SEMES」に変更したとの事。
2010年にはスクリーンはSEMESの持ち株を売却し、SEMESはサムスン電子の100%子会社となった。
こう聞くと、ちょっと複雑ですよね。
日本の技術を盗みベースにした韓国企業が、今度は中国企業に技術を奪われた形に。
2022年10月、半導体技術窃盗容疑でサムスンの現社員4人を起訴。中国や米国に流出させ起訴された
ソウル中央地検は、サムスンエンジニアリングの研究者2人とサムスンの元技術者2人を、不正競争防止法と産業技術保護法違反の罪で身体拘束付きで起訴。
元社員1人は、中国の半導体コンサルティング会社に再就職しようとしていた2018年8月、サムスンエンジニアリングの社員2人から操作マニュアルや超純水製造システムの設計図などの重要技術データを受け取り、流出させた(中国の企業に行く為の土産にした)。
中国企業に就職した後、このエンジニアは盗んだ資料を使って超純水製造システムを製造したとされる。
超純水とは、半導体製造工程で洗浄に使用する為に、イオンや有機物、微生物などを取り除いた水の事です。
サムスン電子は2006年から毎年2120万米ドル(27億5000万円位)以上を投じて超純水製造システムを開発してきましたが、これを簡単に盗まれました。
検察によると、別の元社員はサムスン電子に勤務していた時に、サムスン電子の重要ファイルをライバルであるインテルに漏洩した罪に直面。
検察によると、彼は当時インテルに転職する途中であり、同社の半導体技術データにオンラインでアクセスし、写真を撮る事でファイルを盗み出したという。
韓国から最先端技術が中国に大量流出
最近、韓国の最先端技術が中国共産党に盗まれたというニュースが頻繁に流れており、韓国国家情報院は昨年8月、2017年から2022年2月までに、韓国で産業技術の海外流出事件が99件発生し、その3分の2が中国に流出した事を明らかにしています。
この99件の内訳は、ディスプレイ技術19件、半導体技術17件、電気・電子技術17件、自動車技術9件、造船技術、情報通信技術、機械技術各8件となっています。
全体(99件)の3分の1(34件)が国家安全保障と国民経済に重大な影響を及ぼす「国家核心技術」事件だったとの事。
韓国国家情報院長パク・ジウォンは「10年間開発した技術がたった1秒で流出する事があるので、産業セキュリティは企業問題ではなく国家安全保障そのもの」と述べており、これには同意です。(盗まれ過ぎですが・・・)
とこの様に韓国はこの有様ですが、表に出てないだけで日本でも発生している可能性がありますよね。警察庁は警告をしてくれていますが、もう少し技術海外流出事件については、発生件数など分かりやすくアナウンスしてくれた方が危険性が認知され予防になると思います。