国連によれば、中国は世界の漁業生産量の約36%を占め、年間1520万トンの海洋生物を捕獲しています。
北京の発表によると、中国の遠洋漁業の漁船団は約2,500隻だとされていますが、調査によると、世界の海をトロールする中国漁船は17,000隻にもなるという。それに比べ、アメリカの遠洋漁業の漁船はわずか300隻です。
中国政府の莫大な補助金によって、中国遠洋漁業船団は現在、世界中のほぼすべての海洋に展開されている。
この船団は日常的に法律違反を犯し、、ライセンスや書類を偽造し、船上で人権侵害を犯していることが明らかになっています。
クワッドの動きで日本も悩まされている中国違法船の水産物乱獲を牽制出来るかもしれません👏
今回の違法中国漁船取り締まりはインド太平洋地域で影響力を強める中国に対抗する為に、4カ国(米国、インド、オーストラリア、日本)の首脳により5月24日に東京で開かれた安全保障会議で発表されたもの。
協定の新計画には、中国が他国の領海で行っている違法な漁業やその他の不法行為を加盟国が追跡できるようにするための措置が含まれていました。
インド太平洋地域でトランスポンダー(応答装置)を稼働せずに操業する中国漁船や輸送船を追跡しやすくなる様子。
クアッドメンバーは共同声明で中国を念頭に「係争地の軍事化、沿岸警備船や海上民兵の危険な使用、他国の海洋資源開発活動を妨害する努力」を、海洋イニシアチブを通じて行うと発表しました。
「インド太平洋パートナーシップの下で、クワッドメンバーには地域海域におけるほぼリアルタイムの活動を、より速く、より広く、より正確な海上画像で提供することを約束する」と、米国政府の代表者は5月24日のサミットで述べている。
米国政府当局者は「領海と排他的経済水域で「何が起こっているのか」を知る能力を向上させるために、ほぼリアルタイムの海事写真を提供することをクワッドで約束した様です。
急増してきた中国の日本近海での水産物乱獲について
日本水産庁は2015年4月頃より、北太平洋の日本EEZ境界線のすぐ外側の公海水域でサンマやサバ類等を漁獲しているとみられる中国漁船が急増し、2016年に漁業取締船等がこの水域で視認した中国漁船とみられる漁船の隻数は、288隻に上ったと報告しています。
これらの漁船の多くは新型のまき網漁業を行う大型漁船で、1万トン級の超大型船を含む多くの運搬船が漁場からの漁獲物の運搬に当たっているため、漁船は漁場を離れることなく効率的に操業することが可能になっています。
さらに、この中には、右舷と左舷で異なる船名が表示されているものや、複数の漁船が同じ船名を表示しているもの、船名部分が塗りつぶされているものなど、国際ルールに反する漁船も確認されています。
こうした物の取り締まりも期待したいですね。
中国は定期的に沿岸警備隊と漁師に、日本を含むインド太平洋地域の他の国々の海洋領土で天然資源を調査するよう命令している。東京は5月9日、中国沿岸警備隊の船舶による日本の領海侵犯に異議を申し立てるため、北京に公式な外交的抗議を行っています。
違法中国漁船の実態
違法漁業を糾弾しているEnvironmental Justice Foundation(EJF)の新しい調査報告書(2022年4月分)によると、中国は国家補助金を出して全世界で違法な漁業活動を行っていることが明らかになりました。
100人以上の違法中国漁船の乗組員へのヒアリングから、国家補助金が与えられている中国の遠洋漁業船団(CDWF)が中国の排他的経済水域(EEZ)外で操業し、中国の食糧安全保障のために海洋資源に依存している発展途上国の海域を搾取している実態が発覚しています。
EJFによると、中国政府による遠洋漁船団への総額18億米ドル(2300億円程度)の補助金が出ていると指摘されています。
また、ヒアリングに応じた乗組員の95%が何らかの違法な漁業を目撃したと答え、58%が身体的暴力を目撃または経験したと答え、85%が虐待的な労働・生活環境を報告している。
※参考 中国遠洋漁業船団による漁業の実態レポート⇩
中国の遠洋漁業船団はどこで操業しているのか?
EJFの'Ever Widening Net Report'によると、中国は世界最大の遠洋漁業船団を有しており、かつては中国国有であった遠洋漁業の船団は、現在ではほとんどが民間運営の形をとっています。EJFは中国政府の船に対する支配力は弱まっていると主張している。
中国漁船団の存在はしばしば確認されているが、アフリカ、アジア、南米の国々のEEZ内におけるその存在は、生計と食料安全保障を漁業に依存する沿岸地域を抱える多くの国々にとって懸念材料となっている。これらの地域の多くは、違法中国船を取り締まる仕組みがないため、違法な漁業の標的になりやすいのです。
報告書では、違法中国漁船団から特に被害に会っているのは北西アフリカのモーリタニアで、中国はこの地域の漁獲高の約30パーセントを占めているとの事。
モーリタニアは、魚粉と魚油産業の拠点として知られている。魚粉は、豚や鶏、養殖魚などの家畜の餌として使用される天然魚や混獲魚を丸ごと使った商業製品です。
違法中国船の乱獲の為、この地域は多大な影響を受けており、海洋生態系にも甚大な生態学的破壊がもたらされています。
違法な漁業は、世界の海にどのような害を及ぼしているのでしょうか?
WWFによると、世界の海は推定5億2,000万人の生活を支え、26億人が魚に依存した食生活を送っていると言われています。
違法漁業や乱獲は、乱獲によって魚の個体数が減少し、生活を脅かすため、これらの沿岸地域の食料供給網を脅かしています。WWFは中国を筆頭とした違法漁業による世界の損失は、年間約364億ドル(4兆7000億円程度)に上ると推定しています。
この違法行為は乱獲と密接に関係しており、国連食糧農業機関は、乱獲された水産資源の数は半世紀で3倍になったと推定しています。
また、混獲(異なる種を漁獲する際に捕獲される魚や海洋哺乳類)も違法漁業の副作用としてよく見られ、その結果、毎年何十万頭もの海洋哺乳類が失われています。
※参考 2015年から2019年にかけてIUU漁業違反(Illegal, Unreported and Unregulated漁業、「違法・無報告・無規制」漁業)の記録が最も多い企業グループ上位20社⇩
中国漁船での人権侵害の実態
魚も乱獲され大変な被害に遭っていますが、違法漁船に従事している乗組員も大変な被害に遭っています。
ヒアリングを受けた乗組員は「私は何のミスも犯していないのに、よく殴られたり蹴ら れたりした」と語っており、こうした身体的暴力と並んで、過酷な労働時間や不十分な食事など、劣悪な生活環境も報告された。ある乗組員は、病気にならないように、飲料水を飲む前に1日放置して落ち着かせなければならなかったと述べています。
「食事も飲料水も不適切だった...飲料水は蒸留されて腐っていた」と、彼はEJFに語った。
全体として、インタビューした乗組員の58パーセントが身体的暴力を目撃または経験したと答え、EJFがインタビューした人の97パーセントが、何らかの債務束縛(借金を返すために働かされること)を経験したか、パスポートなどの公的書類を没収されたと答えています。
日本近海の違法中国漁船団についても実態は同じような物だと思われますし、クワッドによる新しい中国の違法漁業を取り締まりに期待したいと思います。
この件は最近、日経も取り上げていました。