フランスの大手半導体企業OMMIC社の常務取締役(74)らが、中国とロシアに国家安全保障を脅かす機密情報を横流ししていた事が発覚し、起訴されていたとしてフランスで大騒ぎになっています。
2023年3月、中国とロシアに産業機密を提供した疑いで、常務取締役らフランス人2人と中国人2人が起訴されました。
フランスメディアよると、フランスにおいて通信・宇宙産業向け半導体主力メーカーであるOMMIC社は、フランスで設立された中国投資ファンドを通じて株式の94%を購入され、2018年に会長に就任した63歳の中国人、ルオダン氏によって徐々に乗っ取られていた様です。
この会社のチップは戦車や戦闘機の軍事レーダー、更にはミサイル誘導システムの装備にも使用されています。
フランスのOMMICは半導体を超高性能にする技術、特に軍事用に利用する技術を習得している世界でも数少ない企業であると報道されており、この為、中国の産業スパイに狙われたのでしょう。
OMMIC社のマルク常務取締役と中国人幹部は、国家安全保障を害する可能性のある技術、文書、ファイルを中露に引き渡した罪で起訴され、懲役15年、罰金22万5,000ユーロとなりました。
フランス司法当局はマルク容疑者について「半導体チップと機密技術に関する情報を故意に中国とロシアに提供する為に、数々の迂回策を講じた」と指摘しており、特に窒化ガリウム関連の技術を流出させていました。
彼等はロシアのクリミア侵攻以来、ロシアに課されている貿易禁止措置を中国経由で回避する為の複雑な迂回ルートを構築していたとの事です。
2022年11月、フランス国家テロ対策ユニットは、国内治安総局および大口金融犯罪対策中央事務局(OCRGDF)と共同で、OMMIC社の水面下の行動に関する調査を開始し、3月に完了。
調査の結果、中国の防衛産業とつながりがあり、北京在住という謎の63歳の中国人実業家ルオダン氏が、フランスで設立された投資ファンドを通じて大量の株式を購入し、2018年1月からは94%の株式を保有するOMMIC社の会長となっている事が判明しました。
フランス人エンジニアであるマークがOMMIC社の事業運営を担当しているが、彼の甥や女性の「副会長」など、中国人社員を要職に配置し、中国人ボスの目となり耳となる事も忘れていなかったようです。
フランス政府はルオダン氏が、OMMIC社が欧州マーケットを独占している”半導体用窒化ガリウム(GaN)技術”を手始めに、北京がまだ持っていない技術を移転する為にこうした動きを取ったのだと疑っていました。
調査過程で謎の中国人会長はフランス人従業員、特にエンジニアを中国に移籍させ、成都にOMMIC社をモデルにした会社を再現しようとしていた事も発覚しました。
現在までのところ、中国とロシアへの半導体関連技術輸出と出荷額は1180万ユーロ(18億752億円位)にのぼるとの事。
偽装した書類による申告によって、これらのOMMIC社製品は中国の武器商人にも送られ、その最終顧客には中国人民解放軍(PLA)も含まれていた可能性があると言われています。
謎に包まれた中国人取締役ルオダン氏は、一度も姿を見せた事がなく、フランスの地を踏んだ事もありません。
彼の株式はフランス裁判所によって差し押さえられ、本人もフランスで指名手配となりました。
彼はまた、フランス軍が使用する可能性のある技術を開発するナノテクノロジー企業など、他のフランス企業にも投資しており、中国の資金がフランスの戦略的ビジネスに入り込む危険性を示唆していました。
マクロン大統領は先日、NATO東京事務所開設に反対などしていましたが、自国産業が中国政府に食い物にされているのを知らない訳もなく、その状態であの言動ですので、すっかり習近平の下僕として動いている可能性が高い様に思われます。そしてこのフランスの悲惨な状況を見ると、日本も早急にスパイ防止法の成立を急いで欲しいところです。