対外強硬派路線から外交重視路線に変わりつつあるイランの改革派ペゼシュキアン政権の新しい外相が、イランは対日関係を「全面強化」したいと申し出してきました。

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イラン外相に8月21日就任したアラグチ元駐日大使は、就任に合わせて日本との関係強化を発表。

イランとイスラエルとの争い等の話題は避けられました。

西側全体から現在制裁されているイランですので、日本の次期首相と協力し、米国政府が制裁緩和する流れを作りたいのかもしれません。

今後4年間外務大臣を務める事が承認されたイランのサイード・アッバス・アラグチ外相は今週、自身の日本に対する深い知見に基づいた包括的なロードマップに基づき、イラン外務省はあらゆる面でテヘランと東京の関係を強化していきたいと発言。

「私は日本の能力と可能性を知っている。日本はイランのエネルギー、石油、経済の分野でもっと重要な存在になれる。イランは石油・エネルギー分野での活動に関心を持つ日本企業を歓迎するし、日本はイランの油田に復帰し、イランは日本への石油供給に貢献できる」と言っています。

アラグチ外相は、今後のイラン外交政策の優先事項について、新政権は東アジアとの関係強化を重要な目標に定めており、特に日本が重要だと強調。

過去10年間に米国政府がイランの核兵器開発を抑制する為に、イランの銀行や企業に数百の制裁を課している為に現在イランとの経済活動は停止していますが、イラン側としてはなんとか日本に経済協力して欲しい様です。

そうは言っても、イランの核開発を制裁するのは当然ですのでイランの提案は有り難いですが難しい話です。少なくともイランが核兵器自国生産の野望を捨てるまでは。

因みにこの親日派として知られるアラグチ氏は、2008年から2011年まで駐日大使を務め、2019年には安倍首相が米国とイランの仲介役としてテヘランを訪問した際にトランプ大統領のメッセージをイランの最高指導者ハメネイに伝えるなど、重要な役割を果たした人物です。

日本の次期自民総裁選の勝者にはこうした難易度の高い交渉も求められます。

ここまでは日本メディアが伝えている内容です。

ここからはイラン側の報道。

 

アラグチ外相がイラン議会で親外務大臣就任の信任投票を獲得した数時間後、日本の上川外相はイラン外相に宛てた祝辞の書簡の中で、両国間の二国間関係のさらなる発展を求めた。

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日本の外務省ウェブサイトの声明は更にこう述べている「書簡の中で上川大臣はイランが中東の平和と安定に向けてより建設的な役割を果たし、国際社会との協力を進めることへの強い期待を表明する。

元駐日大使で日本の専門家であるアラグチ新外相と協力し、歴史的な友好関係に基づく二国間関係をさらに発展させ、緊張緩和と中東情勢の安定の為に緊密に協力していきたい。」

アラグチ氏は2021年からイラン外交戦略会議の事務局長を務めており、2015年のイランと世界大国との核合意におけるイランのトップ交渉官でもあった。

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イラン外相は日本の通信社とのインタビューで、米国の対イラン敵対的アプローチを止め、制裁を解除する必要性を強調しました。

日本の共同通信社がイラン・イスラム共和国のアッバス・アラグチ外務大臣に行ったインタビューは以下の通り。

質問:大臣、日本についての知識と日本の能力を考慮して、現在の状況で両国間にはどのような協力分野があると思いますか?イランと日本の協力の展望をどう見ていますか?

回答:私は日本の能力を知っています。日本はイランのエネルギー、石油、経済分野で更に重要な役割を果たす事ができる。イランと日本は独特な能力を備えており、広大なアジア大陸全体で安定的で有益なパートナーシップを築く為の大きな能力を持っています。この点において、イランと日本の間の経済貿易関係の拡大は自然かつ論理的な選択肢であるように思われる。私達はこの協力が実りある協力の方向に継続される事を期待しています。

質問:新政権では東アジア協力の優先順位や計画はあるのでしょうか?

回答:イラン・イスラム共和国の新政府は東アジアとの関係を確立する事を外交政策の主な目標に設定しました。この文脈において、私は優先事項における日本の重要な立場を強調したいと思います。不確実性と不安定性、そして急速な世界的発展に直面して、イランと日本の間の経済・商業協力に新たな道を開く為には、前向きなアプローチを採用する必要がある。私達は両国の共通の利益を妨げる障害を克服し、共通の重要なニーズを優先しなければなりません。現在の状況を包括的に評価する事で、両国に進歩と繁栄を齎す建設的なパートナーシップを確立する事ができます。

質問:大臣。米国の制裁がある中、どのようにしてこれら全ての協力プログラムを実行できるのでしょうか?制裁解除の基本計画や欧州との関係はどうなるのか。

回答:イラン外務省はしかるべき時期にワシントンとの緊張を管理し、ヨーロッパ諸国との関係を回復する為に行動を起こすが、それは勿論、彼らが敵対的なアプローチを止め、2015年のイラン情勢を復活させる事が出来る場合に限る。核合意も制裁も解除される必要がある。イスラム評議会での私の外交政策を説明する際、私は国の基本原則を遵守しながら、真剣で集中的かつタイムリーな交渉を通じて制裁、特に一方的制裁を解除するという重要な目標を強調してきました。※制裁を解除しないと欧米との関係を改善しないという意味か?

質問:イランと日本は経済を超えた分野で協力する事は可能ですか?日本はイランと他国、特にアメリカとの間の仲介者としての役割を果たす事ができるだろうか?

回答:この文脈において、また私の観点からすると、イランと日本は歴史を通じて、友情、信頼、尊敬、相互理解によって特徴付けられる絆を築いてきました。両国の指導者は、この揺るぎない基盤、つまりイランと日本が建設的な精神と楽観主義をもって地球規模および地域の課題に協力して立ち向かう事を可能にする基盤を高く評価している。私の意見では、常に革新の余地があります。

質問:日本企業はイラン大使館や外務省次官時代からあなたをよく知っていますが、あなたの経済外交において日本企業の居場所はありますか?

回答:イランは、イランの石油・エネルギー分野への取り組みに関心のある日本企業を歓迎します。日本はイラン油田に復帰し、イラン油田開発と石油生産に貢献できます。

 

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イラン外相のこうした日本への要請は、イラン国内が相当に厳しい状態にあるのを反映しているからかもしれません。

それもその筈、今年に入りイラン国内経済はとんでもない惨状を呈しています。

イラン国民は住宅価格が前年比50パーセントも上昇し、家賃が平均給与の約2倍に達しており、既に不況のどん底にあるイラン経済に不動産インフレが甚大な経済的、社会的混乱を引き起こしている様です。

テヘランで最も家賃が安い地区の一つであるベリアナクにある平均的な70㎡のアパートの家賃は、現在少なくとも月額460ドル(72000円位)となっており、平均月収の約240ドル(37800円位)を遥かに上回っているとの事。

イランメディアは「現在、多くの賃貸世帯にとって家賃の支払いは不可能な状況になっており、現在の状況下で一部の世帯がまだ家賃の支払いをなんとか続けているのは奇跡以外の何ものでもない」と報道しています。

イランの人口のほぼ3分の2が貧困ライン以下の生活を送っており、記録的な失業率と継続的な国際制裁により、イランの高学歴の中流階級でさえ貧困に陥っているそうです。

これに加え、イスラエルとの戦闘まで始まればイラン経済は間違いなく崩壊します。