中国BYDが31日、日本で中型のスポーツ用多目的車(SUV)「ATTO(アット)3」の発売を開始。発売に伴い20店舗をオープンし、令和7年末までに全国100店舗以上に拡大する計画だと報道されています。
今後日本でシェアをテスラのように伸ばす可能性がありますが、ここではこの企業が日本で浸透する前にその危険性について指摘します。
日本に投入されるATTO 3のデザインを指揮したBYDのデザイン責任者、ヴォルフガング・エッガー氏はランボルギーニのデザインなどで活躍してきた人物ですが、そんなお洒落なEVが440万円という手頃な価格で手に入ると報道。
BYDは中国政府が所有、管理し、莫大な補助金を受けている企業
BYDは中国共産党と一体化した企業活動に対する世界からの批判を避ける為に、民間企業である事をアピールしています。
しかし、米国の研究者はBYDの指導部と軍を含む中国の国家機関との深い個人的な関係や、BYDへの何十億ドルもの国家補助金による運営が行われている事を発見しました。
↓BYD は2020 年までの 5 年間で中国政府から最も多くの財政的恩恵を受けました。同社は国から総額6億米ドル(780億円程度)を受け取り低価格戦略でシェアを取っている。
BYDの経営陣は、共産党の公職を歴任した創業者の王伝福や、BYDの独立非常勤取締役を務め、中国国有防衛コングロマリットである中国兵器工业集团(Norinco Group)傘下の研究所で研究指導も行うZi-dong Wangなど、中国政府と直接的な個人的関係を持っています。
BYDと現在欧米からブラックリストにされているHuaweiは2019年3月に「包括的戦略協力協定」を締結し、連携
この提携により、今後BYDとファーウエイは自動車のインテリジェント ネットワーク接続、インテリジェント ドライビング、クラウド管理、などの自動運転分野で綿密な交流と協力を行うとしていました。
BYDとAI (人工知能)、5G、クラウドコンピューティングなどの分野でリードしているHuaweiは連携してデータを共有している様子。
言うまでもありませんが、Huaweiは米国国防総省が中国人民解放軍の支配下にあるとブラックリストに指定している企業です。
またウイグル人監視システムを構築した企業の1つでもあり、BYDはHuaweiとEVの膨大なデータを共有している可能性が高く、これ一つとっても日本国内に普及させる事は危険だと思われます。
Huaweiの鸿蒙システムを搭載したBYDの新車
2021年10月に発表されたBYDとHuaweiが共同開発したEVについて。
中国のEV車における2大巨頭であり、世界有数の5G機器サプライヤーでもあるBYDとHuaweiは強力な提携関係を結んでおり、今回、共同生産の新EV車を発表しています。最大の目玉はHuaweiの鸿蒙システムを搭載している事。
Huaweiの鸿蒙システムがGoogleのAndroidやAppleのIOSと異なるポイントは、鸿蒙がIoTを通じて世界を完全に繋げる事に特化したシステムである事だと言われています。
価格は、補助金適用後、約23万元から28万元(440万円~540万円程度)。
BYDは「民間企業」としての地位を利用して海外の技術、データ、市場を獲得し、その後、中国の国有企業や軍需企業に引き渡す
Alliance for American Manufacturingの調査により、BYDが中国軍事企業にその技術と研究データへのアクセスを許可している事が判明しています。
※Alliance for American Manufacturing (AAM) とは、2007 年に主要な国内製造業者と北米最大の産業組合である United Steelworkers によって設立されたアメリカの製造業を強化し、新しい民間部門の雇用を創出する事を目的とした組織です。https://www.americanmanufacturing.org/about-us/#jobs
例えば、2018年BYDは中国最大のミサイル兵器と発射台の研究・生産拠点である中国発射台技術研究院(人民解放軍の組織)と「戦略的協力」を行うと発表しています。
BYDと中国発射台技術研究院 の「強力な同盟」は、ハイエンド技術と市場の完璧な結合を実現し、今後も軍民融合戦略の実施を推進していくとこの際に発表。
両社はEV車と部品、クラウドレール事業、商用航空宇宙の分野で緊密な協力を促進。
中国発射台技術研究院の軍民融合分野における新たな一歩でもあり、トップレベルの設計を強化し全面的に協力を推進する重要な試みであるとの事です。
しかし、上記の例は一部で、BYD の研究開発センターは、少なくとも次の 3 つの「軍民融合企業区」でインキュベート(インフラストラクチャと一連の包括的なサポート サービスを提供)されているとAlliance for American Manufacturingは報告しています。
Beijing Daxing MCF Industrial Base、西安ハイテク産業開発区、内モンゴル自治区の包頭装備製造工業園区にBYDの研究センターは設置。
西安区のホームページには、このゾーンについて次のように書かれています。
国防科学技術産業とMCF(military-civil fusion、軍民融合)を通じて、軍需産業と地域経済の発展を促進する党と国家のガイドラインを実施する中国における重要な国防科学技術基地である。
軍事的需要に導かれ、主要プロジェクト、重要分野、主要方向を突破口とし、社会全体から質の高い資源を吸収して国防建設に参加し、民生技術の軍事分野への進出を導き、ネットワーク情報、新エネルギー、電子情報を推進する中国の特色ある先進的な防衛科学と技術産業体系の構築に力を注ぎ、国家安全保障の戦略的抑止力を強化するエリアです。
Beijing Daxing MCF Industrial Baseは2012年に工業情報化部によって承認され、航空宇宙技術、兵器産業、新素材、新エネルギーに重点を置いており、中国兵器工业集团(Norinco Group)、中国航空工業集団(AVIC)、中国電子科技集団(CETGC)、中国航空宇宙建築設計集団(CAEC)、中国航空宇宙工業集団(CAEC)、中国航空宇宙建築設計研究院(航天科工建筑设计研究院)、中国火箭股份有限公司(中国ロケット)などが入居しています。 BYDはこうした企業と並んで配置されています。
米国議会は以前から、BYDなどの中国企業が米国で好き勝手を行う事を禁止する方向で動いています。
非市場経済的な中国政府による無限のバックアップと、EVマーケットを支配する目標の為に作られたBYDの様な企業は、世界の既存の競争相手に重大な危険を齎していると警戒されています。
こうした安全保障上の問題の他にも、BYDのような中国国有企業が野放しになれば、米国経済に壊滅的な打撃を与える事も無視できないと指摘。
BYD等の中国国営企業と違い、何万もの米国の雇用は、政府の積極的な支援の恩恵を受けない、競争力のある市場ベースの企業のエコシステムによって支えられている為にフェアではないと。
最終的には何百万もの米国の雇用が危険に晒されるし、何百万もの雇用が中国のWTO加盟からの過去20年間の生産シフトと輸入競争によってすでに失われています。
BYDが日本で展開を始めた以上、日本も他人事ではありませんね。